Sigfoxとフィルム素材のIoTデバイスで流通現場をスマート化する、開封検知ソリューション「SeeGALE」

流通業界においては、欠品による機会損失や過剰生産・在庫を防ぐために、消費者のニーズや消費傾向を正しく知ることが重要になります。しかし、多くの事業者による分業体制が築かれたサプライチェーンにおいては、こうした消費にまつわるデータの把握が困難となっているのが現状です。
これを受け、京セラコミュニケーションシステム(以下、KCCS)では、Sigfoxという通信技術を活用し、IoT基板型デバイスを通じて開封を検知するソリューション「SeeGALE(シーゲル)」の開発に着手。「段ボールや封筒がいつ・どこで開封、利用されたか」の見える化により、在庫管理や生産計画の最適化を支援することを目指しています。

プロジェクトメンバー

  • ワイヤレスソリューション事業部 寺川 尚希

EPISODE.1 流通現場の課題解決に向け、IoTソリューション開発に着手

現在の流通業界において、多くのメーカーが抱える課題の一つが「出荷した製品が、いつ・どこで・どのくらいエンドユーザーに消費されたか、を正しく把握できていない」ことです。これにより、消費傾向を踏まえた生産計画が立てられなかったり、欠品のないよう過剰に在庫を持つことで多くのコストがかかったり……といった状況が生まれています。

KCCSはこうした問題解決のため、製品の出荷 / 発送・位置・開封にまつわる情報を収集して可視化する、開封検知ソリューション「SeeGALE」の開発に着手しました。

SeeGALEは、小型の電子装置(ICタグ)に書き込まれた情報を、電波を使って自動で認識する「RFID」の考えを採用しています。具体的には、段ボールや封筒の開け口部分に装着したSigfox対応の超薄型IoTデバイスから送信された情報と、国内人口カバー率95%のSigfoxネットワークにより、出荷/発送、開封および位置情報などの情報を、離れた場所からでも検知・可視化できる仕組みです。

このSeeGALEの導入により、メーカーが出荷数ではなく開封実数を正確に知ることができます。そして、その数字を分析することで、適切な在庫管理や生産計画の改善につなげられる状態を目指しています。

EPISODE.2 低価格・小型軽量・高い汎用性を兼ね備えたデバイスを目指し、試行錯誤を重ねる

2021年秋、多種多様かつ大量の製品に搭載されることを見据え、低価格・小型軽量・高い汎用性を備えたIoTデバイスの開発を開始しました。SeeGALEで使用するIoT基板型デバイスの開発は、KCCS内においてもパートナー企業においても実績のないものだったため、プロジェクトの第一歩となる素材や技術の検討段階から試行錯誤の繰り返しでした。

はじめは、専用の紙に導電性の高い銀インクで配線を書く方法を検討しましたが、性能面や量産性において課題が残り、この方法は断念しました。続いて目を付けたのが、紙に近い素材である「フィルム」です。素材にフィルムを選んだあとも「フィルムに載りやすく、はがれにくい銀インクは?」「通常の基板と同様にはんだ付けを行うと焼けてしまうフィルムに対し、どのように部品を載せるか?」など、さまざまな問題に直面しました。しかし、パートナー企業の協力を得ながら、こうした問題を1つ1つ解決していき、およそ1年に及ぶ試作・評価を経て、フィルム素材のIoTデバイスを形にしていきました。

今回の開発で特に心掛けたのは「理論にもとづく検討」です。社内で前例のない開発だからこそ、基礎の基礎から確実に実行しなければ成功は望めません。そこで、検討に先駆けて日々理論的な勉強を重ねました。特に、この開発による知見がフィルムを素材としたデバイスにしか当てはまらないものにならないよう、通常の基板の理論に重きを置き、それをフィルムに適用することを重視しました。

EPISODE.3 「SeeGALE」を、暮らしのあらゆる場面で活躍する「当たり前」の存在に

第一弾となるIoTデバイスが完成して以降も、SeeGALEがより流通の現場で幅広く、かつ便利に活用される存在となるために、KCCSでは性能を向上させる取り組みを続けています。現在は、さまざまな形状の荷物に貼付したり、運送時の衝撃でフィルムが曲がったりしても、性能が維持されるようIoTデバイスの柔軟性を高めるため、部品の配置や配線の引き方の見直しを進めています。

加えて、フィルム状でありながら一般的な基板と変わらないパフォーマンスを実現できるよう信頼性を高めつつ、国内外を問わず量産展開できる体制を築いていく予定です。そして、さらなる性能向上と国内外での量産の実現を目指していきますが、その先もKCCSの挑戦は続きます。

フィルム素材のIoTデバイスを使って「こんなことができたらいいな、というIoT活用のアイデアやニーズは、世の中にたくさんあります。例えば、封筒にデバイスを搭載してDM(ダイレクトメール)の効果測定や機密文書の封印監視、薬のパッケージの服薬管理など。『SeeGALE』が人々の暮らしのあらゆる場面で活躍する存在になれるように、今回の開発を通して得た知見を活かして、今後もアップデートを続けてまいります」。

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