図書館システムとは?業務効率化とサービス向上を両立する仕組み

2023.09.04

図書館システムには、業務効率化と利用者へのサービス向上を目的とした「閲覧管理」「資料管理」「相互貸借」「統計・帳票」「利用者サービス(OPAC)」の5つの基本機能があります。これらの基本機能が備わったシステムにはさまざまなプラットフォームがあります。最新の図書館サービスやシステム移行に役立つ情報等と合わせてご紹介します。

図書館システムの基本的な5つの機能

閲覧管理

図書館職員がカウンターで行う貸出・返却・利用者登録・予約受付など基本業務を支える機能です。本などの資料の所在を明確にするうえで欠かせません。また、利用者が学習・研究・調査目的で必要な情報・資料などを求めた際に、質問に回答したり、情報を検索したりするレファレンスサービスにおいても閲覧管理機能が役に立ちます。

資料管理

本の購入や管理はもちろん、継続発行される雑誌類の管理、製本管理など、図書館の蔵書となるさまざまな資料を収集して管理するのが資料管理機能です。また、年に一度3日~1週間ほど来館者向けサービスをストップして行う「蔵書点検」においても、資料管理機能が大いに役立ちます。システムによる管理精度の高さは、職員の負担軽減にもつながります。

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相互貸借

図書館内に目当ての本などの資料がなかった際に、他館から借りて貸出を行う仕組みが相互貸借機能です。方法としては、まず利用者が読みたい資料をリクエストします。リクエストされた資料が図書館内で所蔵していない場合、対象の資料を所蔵している近隣図書館と連携し、依頼受付、資料用意、貸出、返却までの流れをスムーズに管理します。ユーザビリティ向上はもちろん、利用者の満足度向上にもつながる機能です。

統計・帳票

図書館における利用者数・貸出点数などの実績を管理するのが統計・帳票機能です。公共図書館の運営においては、利用者数の増減が各地方公共団体からの評価になるだけに、定量的な実績の把握が非常に重要になります。また、利用実績の把握が正確になることで、蔵書点検の実施時期の見極めもしやすくなるなど、各地方公共団体における目標設定や図書館内の職員の課題理解にもつながります。

利用者サービス(OPAC)

OPAC(Online Public Access Catalog/オンライン蔵書目録)とは、利用者がオンラインで探したい資料を探せる蔵書目録検索システムです。自宅のPCやスマートフォンからOPAC(オンライン蔵書目録)によって本の所在を確認できる検索機能が非常に便利であり、利用者にとっての図書館の利便性を大きく高めます。

図書館システムの種類

一口に図書館システムと言っても、その種類は多岐にわたります。システムを運用するプラットフォームが多様であり、運用する図書館の種類もさまざまです。図書館システムの種類をひもとくうえで、プラットフォームの種類と各図書館の種類を説明します。図書館システムにおいては、職員の運用状況や管理ニーズを踏まえた最適なプラットフォーム選定が重要です。

プラットフォーム

図書館システムのプラットフォームは、主にサーバーのタイプである「オンプレミス型」「クラウド型」に分けられます。

オンプレミス型 図書館内にサーバーを設置してシステムを運用する形態です。身近にサーバーがあるため、運用、管理、保守も図書館内で完結できます。
クラウド型 クラウドサーバー上にアクセスして図書館システムのサービスや機能を利用する形態です。サーバーのメンテナンス全般をベンダーに委ねるため、図書館業務に集中しやすくなります。

図書館の種類

図書館システムを導入するうえで、システムの種類と同様に考慮すべきは、各図書館の違いです。主に5つに分類できます。

公共図書館 国や都道府県、市区町村などが管理・運営しており、一般公衆の利用のために主に教養、レクリエーション、調査、研修のために資料を収集し提供することを目的としています。
学校図書館 小中高の学校内に設置されるのが学校図書館です。児童や生徒の興味・関心を醸成し、自発的・主体的な読書や学習を促進する役割を担います。加えて、教員のサポートを行う場としての機能も有します。
大学図書館 大学に設置された図書館です。学生たちの学習や学術研究活動全般を支える重要な学術情報基盤の役割を担います。
企業図書館 企業プロダクトのノウハウや実績を蓄積するのが企業図書館です。企業の職員にサービスを提供するのが主な目的となります。
専門図書館 研究機関に設置され、特定の専門分野における情報関連の資料を収集した図書館です。各組織体の構成員を対象とし、その組織の目的実現のために設置されます。

最新の図書館システム

DX推進が注目されている昨今では、どの分野においても先端のAIやIoTなどのテクノロジーの導入によるイノベーションが期待されています。図書館システムにおいてもその傾向は同様です。最新の図書館システムには、便利で利用者視点でうれしいサービスや機能が多く存在します。SDGs的な視点から、「読書バリアフリー法」「 障害者差別解消法」などの法律を意識し、障がいの有無にかかわらず誰もが利用できる図書館の実現が目指されています。

本を耳で聴く「オーディオブック」、スマートフォンやタブレットで図書館の資料が読める「電子書籍」、図書館の利用者カードの役割も担う「マイナンバー」、「スマートフォン(貸出カード)」、遠隔から図書館のサービスを利用できる「非来館サービス」など、デジタルを活用しUX(ユーザーエクスペリエンス)を提供できる機能が登場しています。

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図書館システムの移行の手順

既存の図書館システムを最新のものに移行したい場合は、その手順をしっかりと把握しましょう。選定と移行時の2つのフェーズにおいて手順のポイントを簡単に紹介します。

図書館システム選定のポイント

選定の際に最初に重視すべきなのは、利用者のニーズです。図書館システムのDXやIoTが進む中で、非来館サービスを筆頭に利用者にとって便利で、「また利用したい」と思うサービスを提供できる図書館システムであることが理想と言えます。また、提供ベンダーの選定も非常に重要です。図書館の休館日は図書館の意向だけでは決定しづらいので、サービスインをずらせない事情があります。そのため、他の地方公共団体の導入実績などの調査を踏まえ、複数のベンダーにヒアリングするなどもおすすめです。

公共図書館の調達方法としては、提案という形で総合的に判断を行う「プロポーザル」と最低限の信頼性や品質を担保したうえで、価格をベースに判断を行う「入札」などがあります。図書館を運営する組織のルールに応じて、必要な調達方法を選択しましょう。

図書館システム移行時のポイント

実施については多岐にわたるポイントがあるので、ここでは主にデータ移行について紹介します。図書館システムのデータ移行に手間取ることでサービス開始の遅延や運用の負荷増大などのリスクを伴います。そのため、旧システムの仕様書の情報を踏まえて、移行計画の要件をきちんとベンダーに立案してもらうことが大切です。新システムも仕様書に沿った運用がきちんとできるかをジャッジするのが実施におけるポイントとなります。

まとめ

業務効率化とサービス向上につながる図書館システムの導入を

多くのベンダーによる図書館システムの開発競争が激化する昨今ですが、優れたシステムを導入する意義としては、職員の業務効率化と利用者へのサービス向上が挙げられます。そのため、単に機能がすごいからなどの理由ではなく、図書館に関わる人、特に利用者がどんな図書館サービスを求めているのかが焦点となるでしょう。そうした視点が図書館システムの導入においてはもっとも重要です。