• ERP・経営管理

株式会社いけうち組立製造業向けグローバルERP「Infor SyteLine」

個別最適な業務フローをInfor SyteLineとKCCSの導入支援で標準化
データの見える化により生産の最適化や提案型のビジネスが可能に

(前列右から)
いけうち 営業本部 次長 尾兼 裕孝 氏、同 上席執行役員 兼 情報化・IoT推進担当 村上 慎悟 氏、同 情報部 次長 山下 広志 氏、
KCCS カスタマソリューション事業部 ERPソリューション部 部長 田井中 学
(後列右から)
いけうち 情報部 係長 森浦 雄大 氏、同 営業本部 課長 西原 健 氏、
KCCS ソリューション営業統括部 ビジネスソリューション営業部 西日本BS営業課 ERP営業 チームリーダー 岡本 祐介、
同 カスタマソリューション事業部 ERPソリューション部 東日本ERPソリューション1課 東京ERPソリューション1B 宮﨑 晋伍、
同課 東京ERPソリューション1A チームリーダー 藤本 祐也

株式会社いけうち

設立:1954年11月8日
住所:大阪府大阪市西区阿波座1-15-15 第一協業ビル
事業概要:産業用スプレーノズル・工業用加湿器ならびに応用機器・システムの製造販売および輸出入

株式会社いけうち(いけうち)は産業用の「霧」を生み出すノズル製品のリーディングカンパニーだ。"洗う・冷やす・湿らせる"霧の用途は幅広く、同社のノズル製品は多方面で利用されている。事業の成長とともに顕在化した課題を解決するため、同社は約20年使い続ける基幹システムの刷新を決断。組立製造業向けグローバルERP「Infor SyteLine」を導入し、業務改革と経営改善に取り組んだ。その実現を支援するパートナーに選定したのが、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)である。
KCCSは、プロジェクトの設計からシステムの導入、それに伴う業務フロー改革や現場の意識改革、内製化に向けた開発人材育成など幅広く支援。プロジェクトは計画通りにカットオーバーできた。新システムの稼働により、工場ごとに個別最適だった業務の標準化を実現。データに基づく生産の最適化や提案型ビジネスも可能になった。

1. 既存の基幹システムが個別最適化し、全体の把握が困難に

ビジネスを取り巻く環境や顧客動向の変化に伴い、あらゆる産業でデジタル活用が重要なテーマになっている。データとデジタルテクノロジーを活用し、新しい価値創出や事業変革を推進する企業が増える中、いけうちもデータ活用の課題に直面していた。

いけうちは、強みであるノズル技術を活かして半世紀以上にわたり産業用の「霧」の発生方法と活用方法を開発し続けている。これまで世に送り出したノズルは4万2000種類を超える。その製品は印刷、電気電子、電力、農畜産、食品、医療などさまざまな業界の加湿・冷却・冷房システムなどに使われている。近年は熱中症対策のミストシャワーや新型コロナウイルス対策の除菌システムを支える技術としても用途が広がり、事業は成長を続けている。

その一方、ビジネスを支えるITシステムには課題を抱えていた。既存システムは、20年近く前に自社で構築したもの。「当時は自社製品のライフサイクルが比較的シンプルでしたが、現在は製品が多様化し、部品点数も格段に増えています。事業の海外展開も進み、生産・販売・保守業務は当時と比較にならないくらい複雑になっています。既存システムではビジネスの変化に対応することが難しくなっていました」と同社 上席執行役員 兼 情報化・IoT推進担当の村上 慎悟氏は振り返る。

株式会社いけうち
上席執行役員 兼 情報化・IoT推進担当
村上 慎悟 氏

工場ごとに独自のカスタマイズや改修が数多く施されていたことも大きな課題だ。そのため、工場ごとに業務フローが個別最適化し、情報の共有も困難だったという。例えば、ある製品がどれだけ全体の売り上げに貢献しているのか。それを知りたくても、必要なデータをタイムリーに把握できず、販売後でないと利益率が分からないケースもあったという。

このような状況ではデジタル活用も思うように進まない。「今後継続して成長していくためには、標準化を軸に業務を変革し、データに基づく効果的な経営判断が不可欠です。この活動を支える基幹システムの刷新が急務の課題となっていたのです」と村上氏は力説する。

2. Infor SyteLineの導入実績とプロジェクトマネジメント力を高く評価

デジタルシフトを支える新たな基幹システムの実現に向け、同社が選択したのが組立製造業向けグローバルERP「Infor SyteLine」である。製造業を中心に多くの企業が採用しており、同社が求める要求機能を幅広く網羅している。「豊富な導入実績に基づく信頼性、機能の網羅性を評価しました」と同社 情報部 次長の山下 広志氏は語る。

拡張性の高さと開発の柔軟性も大きな選定ポイントになった。新システムの導入は基本的にパッケージ標準機能を最大限に活用する方式で進める方針だったが、標準機能では対応できない処理やいけうちの強みとなるプロセスの継承にはアドオンによるカスタマイズが必要になる。Infor SyteLineはソースも公開されているため自社でプログラムの解析・改修が可能だ。「デジタルシフトを加速するため、開発の内製化を目指していた当社のニーズにマッチしていました」と山下氏は続ける。

株式会社いけうち
情報部 次長
山下 広志 氏

このInfor SyteLineの存在を知ったのは、KCCSのプライベートセミナーに参加したことがきっかけだった。ここでInfor SyteLineの機能や強みを詳しく知り、KCCSが導入・構築支援を数多く手掛けていることも分かった。「その経験値・提案力を評価し、導入・構築支援のパートナーとしてKCCSを選定しました」と村上氏は経緯を述べる。

KCCSは2018年4月にキックオフした本プロジェクトの設計から導入まで幅広くサポートした。「いけうち様が目指したのは、業務改革と経営改善。基幹システムの刷新はそのための手段です。単なるシステムの提案ではなく、最終的なゴールに向けて業務要件をまとめ、個別最適から全体最適への変革を目指しました」とKCCS ソリューション営業統括部 ビジネスソリューション営業部 西日本BS営業課 ERP営業 チームリーダーの岡本 祐介は述べる。

ソリューション営業統括部
ビジネスソリューション営業部
西日本BS営業課 ERP営業 チームリーダー
岡本 祐介

例えば、業務設計フェーズでは既存の業務プロセスの課題を洗い出し、全体最適化を意識して進めた。また一方で、いけうちの強みを活かすための個別要件にも柔軟に対応した。
「開発については、情報部の方々へ講習会や開発用のQAシートの活用などを通じて技術のスキルトランスファーを行い、内製化を担う開発人材の育成も支援させていただきました」とKCCS カスタマソリューション事業部 ERPソリューション部 東日本ERPソリューション1課 東京ERPソリューション1A チームリーダーの藤本 祐也は話す。アドオンが必要な部分については、両社で役割分担をしながら開発を進めた。

カスタマソリューション事業部
ERPソリューション部
東日本ERPソリューション1課
東京ERPソリューション1A チームリーダー
藤本 祐也

実機を用いたプロトタイプ検証の段階になると、現場からは「なぜ既存の業務フローを変えるのか」「新しいシステムが本当に使えるようになるのか不安」などの声が上がった。それに対し、KCCSは迅速に対応。「いけうち様の情報部の方々と一緒に直接工場を訪問し、業務改革の必要性や現場でのシステム活用がイメージできるようシステムの操作方法を根気強く説明して回りました」とKCCS カスタマソリューション事業部 ERPソリューション部 部長の田井中 学は振り返る。こうしたフォローを両社で連携しながら対応したことで、ユーザーの不安を解消し、意識の変化を促したという。

カスタマソリューション事業部
ERPソリューション部 部長
田井中 学

山下氏は本プロジェクトを総括して、次のように話す。「両社でプロジェクト体制を整え、互いに意見を出し合って深く議論したため、課題発生時にも早期解決を図り、プロジェクトを計画通り進められました。私たちの課題に寄り添った導入支援、プロジェクトマネジメント力を高く評価しています」。

3. 受注重視から売上・原価重視のビジネスに変革

Infor SyteLineをベースにした新システムは、本社および国内の3つの工場に展開を図り、2019年8月から本稼働を開始した。
全社共通のシステム基盤を実現したことで、工場ごとにカスタマイズされていた業務フローが共通化され、業務の標準化が進んだ。これにより、工場間のコミュニケーションも活性化した。「標準」という共通認識に基づいて議論ができるからだ。
業務フローは一部カスタマイズしたが、まず標準化を考えた上で、どうしてもそれが難しいものをアドオン開発した。その際は課題表を作成し、工場間で議論しながら"切り分け"作業を行った。
その課題表の作成や工場間のミーティングもKCCSがサポートした。全社共通の意識がベースにあるため、何をアドオンすべきかという議論も建設的に進み、手戻りも少なかったという。「そのナレッジや対応力もさることながら、変革に取り組む考え方や作業の進め方なども大いに参考になりました」と村上氏は評価する。

これまで難しかったデータの把握と利活用も可能になった。実際原価の見える化はその好例だ。実際原価を正確かつリアルタイムに把握できるようになったため、従来の受注重視の考え方から、売り上げ・原価重視の考え方に、現場の意識が変わり始めているという。
「適切な売価をいくらにすべきか。各製品をどの工場で製造するのが最適か。データを基に、そうした議論が活発に行われるようになり、コスト意識の高まりを実感しています」。(村上氏)

データ把握のスピードも格段に向上した。「例えば、売上データを知りたい場合、以前はIT担当に依頼してデータの提示を待っていたため、数日から1週間のリードタイムが必要でした。今は営業担当が自ら必要なデータを入手できるため、リードタイムが解消されました」といけうち 営業本部 課長の西原 健氏は話す。
これにより、営業のスタイルも変わりつつある。「データを基に納期や売価の話ができるため、提案型のビジネスが可能になりました」と西原氏は続ける。
工場ではシステムの実績数値を確認しながら、製品の選択と集中や製造工程の見直しも進めている。「こうした活動の広がりにより、生産性と収益力のさらなる向上が期待できます」と村上氏は前を向く。

株式会社いけうち
営業本部 課長
西原 健 氏

いけうちは、今後サプライチェーン全体のデータ活用を進め、生産・販売の革新とデータドリブン経営を推進していく。その一環として在庫の最適化にも取り組む。また国内だけでなく、ベトナムにある海外工場への横展開も視野に入れている。海外工場も共通の運用基盤に統一することで、デジタルシフトによる効果はより大きなものになる。
「生産・販売の革新とデータドリブン経営を支援するために、AI、IoTによる工場の見える化、デジタル化を含め、いけうち様の活動を今後も幅広く支援していきます」と岡本は話す。

基幹システムを刷新し、デジタルシフトを大きく加速させたいけうち。今後も標準化を軸とした業務改革とデータに基づくビジネスを推進し、霧の可能性を追求した価値あるソリューションの提供を通じ、多様な産業の発展に貢献していく考えだ。

Infor SyteLineの導入前と導入後の変化

取材時期:2021年9月
掲載日:2021年11月29日

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