2011年03月18日

京セラコミュニケーションシステム株式会社
松井 達朗

アメーバ経営を自主運用している経営者から、自社の運用状況を診断して欲しいと依頼されたことがあります。拝見すると、10部門からなる時間当り採算表が作成されているのですが、各部門の採算表の上に、25%、18%・・・という数字が記載されています。

何ですかと聞くと、各部門の貢献度を社長が判断して分配比率を決め、売上×分配比率を各部門の収入として採算計算をしているというのです。これではアメーバ経営とは言えません。

各部門の稼ぎは、その部門が独立会社のごとく、自部門で作る製品やサービスに市場価格に基づく値段をつけて売り上げて得た金額を用います。たとえ途中工程や口銭収入の部門であっても、自分達が生み出した付加価値に対するお客様からの収入に基づくものでなければなりません。

アメーバ経営は、経営の実体験を通してリーダーやメンバーが採算向上の苦労をする中で、どのような考え方・やり方が良いのかと悩み抜いて創意工夫を繰り返しながら学び成長していくところに価値があります。部門別に採算を出して、赤字か黒字か、目標達成か未達成かを議論するだけでは、アメーバ経営の価値を創出することができません。

したがって、部門別採算の制度設計も、このルールを運用すれば本当の商売のごとく経営の苦労と醍醐味が味わえるかどうかという観点で検討することが大切です。

経営会議においても、このリーダーを何としても立派な人間に育てようという強い意志を持って指導しなければ、アメーバ経営の導入成果は限定的なものになってしまいます。

時間当り採算表を用いた真剣な議論を通じて、社内によりよく生きようとする価値観を確立し、高い使命感を持って懸命に働く社員を養成する。アメーバ経営は、このような経営の修養道場と捉えていただきたいと考えます。

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