株式会社ヤングドライアメーバ経営コンサルティング

業界のリーディングカンパニーを目指す

北陸を中心にクリーニング店を展開するヤングドライ。

近年、積極的にエリア拡大を進め、現在は中京、近畿にも出店。店舗数は300店を突破、従業員は1,200名に及びます。

従来の「クリーニング店」のスタイルに縛られることなく、ハンガー事業部の立ち上げやドライブスルー型店舗の開発など、事業の多角化や業態開発に余念がありません。

ヤングドライ独自の新たなビジネスモデルの確立を目指す栃谷社長。思いを実現するために、どのように構想を描き、幹部社員を引き込んでおられるかを伺いました。

株式会社ヤングドライ
代表取締役
栃谷 義隆 氏

クリーニングは天職。この仕事に賭けていく

ヤングドライの創業は昭和4年です。私の祖父が富山で「旭屋クリーニング商会」を開業したのがはじまりです。その後、父が昭和41年、当時最新の業態だった取次店方式を取り入れ、多店舗化を進めて現在の社名に変更し成長していきました。

私も子供の頃から店を手伝っていました。周りからは「旭屋のよっちゃん」と呼ばれ、自分は洗濯屋なんだと自然に受け止めていました。小学校の作文には「日本一の洗濯屋になる」と書きました。

大学を出て他社で修業し、ヤングドライには昭和61年に入社しました。そして、平成18年から社長を務めさせていただいています。

根っこは負けず嫌いです。北陸を地盤にしてきたヤングドライは、人口減に直面しています。北陸全県合わせても人口は全国の3%。これがさらに減るのですから、放っておけば勝てない理由になってしまう。しかし、できない理由はいらない、苦境も成長のバネにしたいと思ってきました。ユニクロさんは山口から、ヤマダ電機さんは群馬から出てきました。富山から出てきたクリーニング屋だって、勝てるはずだという思いです。

自分に能力があるとか、そんなことではありません。クリーニング屋の倅に生まれてきて、従業員も大勢いる。私がおかしなことをしたら、皆が不幸になる。親が一生懸命働く背中を見て育ち、また周りの人たちからも多くを教わりました。そして、この仕事を天職と思ってやっています。それだけですし、これからもそうしていくだけです。

"アナログ"の仕組みを確立する

昔は商店街に八百屋さんや魚屋さんなど、いろいろな店がありました。それが今はどんどん減ってきています。業種や業態というものは、移り変わっていくのです。

では、クリーニングという業界で、ヤングドライが生きていくにはどうすればよいか?ずっと、このことを考えてきて、今はお客様の利便性を業界として高めていくしかないと思っています。

そして、経営理念に「ライフスタイル(利便生活)提案企業」と掲げました。これは、営業時間を長くする、駐車場を必ず用意する、ボタンの取り付けもできる、ドライブスルーがある。そうした便利さを揃えていくということです。

  • ライフスタイル(利便生活)提案企業として業界の発展に寄与する
  • 全従業員の物心両面の幸福を追求するとともに地域社会へ貢献する
  • 元気ある一世紀企業(安定成長)を目指す人材育成を行う

その上で、ワイシャツ1枚を100円でクリーニングさせていただくのです。

これも便利だ、あれも便利だと、いくつ指折り数えて利便性を感じていただくかが勝負です。もはや、私たちにとっての競争相手は、隣のクリーニング屋さんだけではありません。東レの形状記憶シャツ、パナソニックの全自動洗濯機、さらに花王の洗剤。これらすべてと競争しています。

業界として競争に勝って「ワイシャツ1枚100円ならお願いしようか」と思ってもらわなければなりません。それで、ヤングドライの商売が成り立つのかどうか、クリーニング業界が残るかどうかが決まると思っています。

来店動機を増やすことも重要です。選んでいただくのにクリーニングだけにこだわる必要はまったくありません。傘を直すのもヤングドライ、刃物研ぎもヤングドライ、写真の現像も、靴の修理もヤングドライ。そうやって来店動機を多くつくろうとしています。

やっていることは、すべてアナログの商売です。別にデジタルでなくてよいと思っています。むしろ、アナログの仕組みを確立すれば、その方が強いくらいです。雨が降れば川の水かさが増してダムが必要になるように、人々の生活の中でヤングドライが自然に必要とされるようになっていきたいのです。アナログの仕組みによって生き残っていきたいと思います。

お客様が服を脱ぎ、次に着るまでをビジネスにする

実際の事業は、垂直・水平展開の両面から進めています。

垂直展開とは、クリーニングを中心にしながら、自分たちの領域を少しずつ広げていくことです。コインランドリーやECサイト、ハンガーの製造販売、物流・デリバリーなどです。地方でクリーニングだけやっていても勝てませんから、自分たちのできることを増やそうということです。

例えば、ハンガー事業部。クリーニングにハンガーはつきもので、これまでは外部の業者さんから仕入れていました。これを自分たちでつくってしまおうということです。世間に出回っている一般的なプラスチックハンガーを回収し、粉砕して成型し直し、ヤングドライのオリジナルハンガーを企画しました。型崩れを防ぐ形状に工夫もしました。こういう仕事を、社員OBの人たちがやりたいと言ってくれています。このハンガーは、ありがたいことに、富山県知事より環境賞をいただきました。

抗菌・消臭ビジネスも広がっています。富山大学や地元企業と連携して、光触媒の抗菌剤を開発しました。これは特許が取得できました。

こういう考え方をしていきますと、うちは車も多く持っていますから、次は中古車販売もできるんじゃないか、という意見が社員から出てきます。畑違いの分野に飛び石を打つ経営はしませんが、こういう考え方でよいのだと思っています。社員から声が上がってくるのもうれしいですよ。

事業の選択肢が広がると、皆の努力の幅が広がります。販売の努力、洗濯の努力、物流の努力、備品調達の努力。それだけ努力する幅があれば、何かできるでしょう。

もう一つの水平展開は、エリアの拡大です。

おかげさまで北陸のエリアではトップシェアをいただいています。シェアを確保できたら、次は横展開していくというのが自然な流れです。名古屋には2004年、大阪には2011年に進出いたしました。また、2015年には京都へ進出予定です。着物文化の中心地でもある京都につなげていきたいと思っています。

お客様が服を脱ぎ、次に着る瞬間まで商売にならないかと考えることです。ドライブスルーで車の中から渡せるのも一つですし、宅配の仕組みも一つです。保管サービスもそう。着る瞬間から次の着る瞬間まで、そこにビジネスモデルのヒントがあり、垂直・水平展開につながっていきます。

投資は慎重に。「健全なる保守的経営」を目指す

どんどん展開したいのですが、一方で投資は慎重にするよう意識しています。出ずるものをなくす、というのが基本的な考え方です。

これは、外部に頼んでいた仕事を取り込んで事業化するということです。ハンガー事業の立ち上げも、物流事業の立ち上げも、こうした発想がベースにあります。

今度、新たに物流センターを建設します。イオンさんとのネットでの協業ビジネスの拡大です。

これまでも、イオンさんのテナントとして出店させていただいて事業を拡大してきました。これに加えて日本中のイオンさんから宅配・保管を含めたクリーニングサービスの依頼として、品物がヤングドライに集まってきて、お客様が必要になる時までお預かりしています。これが大きく育とうとしています。

工場はもとより路面店舗についても、原則賃貸ではなく自社保有としています。賃貸にすれば、更新の時期に値上げの要求があるかもしれませんし、契約を終了すればクリーニング設備は使いようがなく、二束三文になってしまいます。そのように先にリスクを残すのではなく、換金性の高い一等地を自己所有してリスクヘッジしています。そして、将来の課題になりそうな芽を、前倒しでどんどん摘んでいく。そういう姿勢で投資をしています。

いろいろやることで、確実に目指す水準が上がってきています。ヤングドライとこの業界を生成発展させ続けよう、中核となるクリーニング事業でしっかり利益を出しながら、垂直展開、水平展開の両面で成長させるという基軸です。これを健全なる保守的経営でやっていこうとしています。

「思いは実現する」。このことを社員に分かってほしい

これらヤングドライが目指すものを実現するのは、社員です。社員とのコミュニケーションに力を入れています。

コンパの場では「ヤングドライはどこに進んでいくのか」と会社の行き先を聞かれることがあります。その時にはしっかり答えるようにしています。

そして教育です。教育研修の場は必要ですし、そのための投資はいとわない。経営理念には稲盛塾長と京セラさんにならって「全従業員の物心両面の幸福の追求」と「地域社会への貢献」を掲げています。そしてアメーバ経営とフィロソフィも取り入れています。ヤングドライが目指す姿を語り、事業の目的を語り、そのための考え方、そして商売のやり方を教えています。

経営会議も大切な場です。本日ちょうど開催したところです。

経営というものを考えると、安定的成長というのは、できそうでできないのですね。成長だけならともかく、「安定的」ということが難しい。これをやろうと思えば、起こりうる課題を芽のうちから摘まないといけない。そして、これを実践するのはリーダーです。リーダーの意志にかかっています。

経営の結果というのは、そのリーダーの心がそのまま表れます。おっちょこちょいな人はおっちょこちょいな結果になり、臆病な人は臆病な結果になる。慎重に、しかし大胆に進められる人は、やはりそのような結果になる。採算表を見れば、そのリーダーの性格が分かるくらいです。

「思いは実現する」。強く思ったことはその通りに実現します。だから、寝ても覚めても目標を達成したいと思うことです。そして反省を忘れないでほしい。

現実問題として、現場のリーダーは「考え方」に飢えています。どういうことかと言いますと、リーダーは部下から一挙手一投足をずっと見られています。それで、何か指示をしたり叱った時に、パッと言い返されて反論できないことがあります。それで現場のパートさんに主導権を握られてしまうのですね。

そうならずに、主導権を握り続けていこうとすれば、部下が何か言ってきた時には間髪入れずに答え返さないといけない。「それちょっと考え方が違うと思うよ。なぜなら...」とやっていく。そのためには、臨機応変に言葉が出てくるということが必要ですし、ボキャブラリーが必要です。それがどういう言葉、話し方なのかということを、私なりに経営会議でやってみせているつもりです。

私も力が入り過ぎて、ちょっと言い過ぎたかなと思うこともあります。しかし、相手も聞く姿勢でいてくれるので、私の気持ちを理解してくれているのかな、と思うところはあります。

今日の会議でも、上司にマネジメントを任せて現場に入ろうとするリーダーがいまして、「お前いつまで後ろ盾を必要としてるんだ。自分自身で前に出てやってみんか!」と言いました。言われた本人は一瞬迷いますが、「分かりました」と返事して決意してくれました。

そういう決意の言葉が口から出るということが大事なんです。本人もどこかで踏ん切りがほしいのですから。そういう考え方を会議や研修の場、コンパの場で伝えています。

ヤングドライの理想はどんどん高くなっています。ですから現状とのギャップが生まれる。これを埋めるのがリーダーだと期待しています。

ヤングドライはまだまだ、これからです。しかし、目指している方向に進んでいると思っています。

私自身も、歳をとってから、ほどほどの人生だったとは言いたくない。一回きりの人生、山登りに例えれば垂直登攀の道を選びたい。それで一生懸命やったことが認められたらと思っています。日本一の洗濯屋。この目標に迷いはありません。

実録経営会議「『最後の砦』という自覚を持とう」

基本的にはあなたがその職場の最後の1人、砦になります。そのあなたが現場の応援に入っているようではいけません。自分が最後の1人だという自覚がありますか?あるなら、現場に入らず、何かあった時の応援要員に回っていないといけない。それを本当に思わないといけないのです。

「すまん、いざとなったらオレも出るが、オレを使わんといてくれ」と言えるかどうかです。

ある意味、現場でレジを打つ方が楽なのです。マネージャーが現場に入れば感謝されます。しかし、あなたが本当に職場の砦になろうと思うなら、「オレはレジに立っとったらいかんのだ、もう少し付加価値の高い仕事を探すから、オレをレジに立たさんといてくれ」と言わなければならないのです。このハードルを乗り越えられるかどうかです。

これは、簡単そうで難しい。私も最初に小さな支店の店長になった時、「おい、明日からオレのこと、店長と呼んでくれ」なんて絶対に言えないと思いました。

そういう難しさはありますが、本当にやらなければなりません。エリアマネージャーという役職を、本当にあなたが理解できるかということです。

今は常務がついてくれています。その後ろ盾がなくなった時、自分が本当に最後の砦になった時、あなたが一人で立てるかどうか。1つ上のポジションでモノを見ることができるかどうかです。

常務のコメントを聞いて、さすがと思うかもしれません。しかし、実際に自分が同じように話す時が来るのです。

「もう私に任せてください!」と言い切れる瞬間がいつ来るのか。

あなたが「今だ」と思うことが大事です。そう思うことが、あなたの進化です。

言い切った今からがスタートです。ぜひ、自分の役職にプライドを持ってください。

リーダーインタビュー「『店を任せてくれること』へのやりがいと楽しさ」

「とにかく仕事が楽しいんです」

ニコニコと話す今木店長は、1996年にヤングドライへ入社。現在まで18年間、パート社員として働いている。

「お客様と接することがもう楽しくて。お客様から『ありがとう』と言っていただく時が一番幸せですね」。店舗の仕事に加え、営業本部のアシスタントとしても力を発揮する。今年4月の消費増税に伴なうプライスリスト(価格表)の見直しは、今木店長が中心となり担当。普段お客様と接する中で聞いた要望をもとに、具体的な改善を行った。

アピア店 店長
今木 愛子 氏

アピア店は今木店長のほか2名のパート社員が勤務する。「自分たちで決めた日次の目標に対してどうだったのかを、毎日売上表に記入しています。売上を伸ばすためには付加価値、いわゆるシミ抜きなどのオプションサービスをお客様にご利用いただくことがポイントですので、皆で意識してお勧めしています」。アピア店の売上は全店の中でもトップクラス。全員の努力の積み重ねが、すばらしい結果を生み出している。

長年ヤングドライ一筋で働く今木店長。「パート社員の私に店を任せていただいている、そのことにとてもやりがいを感じますし、楽しいです。これが一番『ヤングドライじゃないと!』と思うところですね」

リーダーインタビュー「自分で何をすべきかを考え壁を突破すること」

富山エリアサブエリアマネージャー 兼 窪支店マネージャーを務める宍戸氏。2003年に新卒で入社してから現在までの間、富山、中京、高岡エリア内の各支店で経験を積んできた。

「現場ではまずアイロンを持てなければ話にならない。入社してからこれまでの経験の中で強く感じています。現場のベテランの方から見れば、私たちはまだまだ若僧なんですよね。自ら経験して分かって、その上で相手に理解してもらう。そして、『会社としてこういうことが大事だからお願いしたい』というように話して納得してもらうことが大事だと思います」。現在3ヵ月に1度、各店舗の店長クラスを集めてコンパを実施し、目標やそれに取り組む意義を伝える場を大事にしている。

富山エリアサブエリアマネージャー
兼 窪支店マネージャー
宍戸 淳也 氏

「今日の経営会議で、社長から『何をしなければいかんか、もう分かってるやろ?』と言われたんです。私が壁を突破しなければいけないんですよね。今は私が支店に入ることが多くなってしまっているのが現状です。自分が抜けても同じような役割をしてくれる人を育てていかなければいけませんし、私自身はサブエリアマネージャーという立場で、今より高い視点を持ってエリア全体を見ていきたいと思っています」

リーダーインタビュー「振り返ればいつも自分の成長を実感できる」

中村氏は、2005年にパート社員として入社し、2010年に正社員登用。社員としてわずか5年足らずで営業部主任、エリア営業責任者を経験し、営業本部副統括責任者となった。これまで幾度となく店舗へ足を運び、現場のパート社員と接してきたと言う。

「現場では、『パートなのに何でここまでしないといけないんですか』というような声も聞かれます。そうした時にはすかさず『こうしたらいいんじゃないの?』とか『こうやってみよう』と言って一緒に考えるようにしています。実際にできるようになると、やっぱり人間、欲が出るんですよね、うれしくなって。従業員をやる気にさせることも重要な役割だと思っています」。各支店に対してはそれぞれのマネージャーに働きかけ、エリア内でベンチマーク支店をつくり互いに競わせることもしている。

営業本部副統括責任者
兼 富山エリアサブエリアマネージャー
中村 亮子 氏

「やっぱり社長から求められるものは高いんですよね。何度も挫折しそうになるんですが、いつも振り返った時に、ああ、私成長できたなと実感できるんです。悩みながらやっているとパーンと開ける瞬間があって、こんな簡単なことだったんだと。日々成長させていただいていると感じています」

経営管理部門インタビュー

毎月月初に開催される経営会議。栃谷社長をはじめ、役員幹部、各エリアマネージャー、サブエリアマネージャー、支店マネージャーが出席する。その運営を担うのが、経営管理を担当するアメーバ経営部門だ。

永井氏
経営会議では、重点項目に対する進捗・振り返り、前月実績と当月予定を発表します。アメーバ経営部門では全部門の実績を取りまとめ、会議時に配布しています。各支店マネージャーには、会議開催前に毎月1回「活動報告書」という各部門の重点項目と活動内容を書面にして提出してもらい、それに対して私たちアメーバ経営部門と社長がコメントを書いて部門へのフィードバックを行っています。会議では、この活動報告書をもとにリーダーが発表を行いますので、要点や内容を捉えた分かりやすい発表ができるという利点があります。
折口氏
支店マネージャーには数字で目標値を出すように言っていますが、ここがまだ弱く、社長からもご指導いただいています。一生懸命取り組んだことをどう数値化するのかが今後の課題です。
永井氏
今回から、会議の場を利用して、アメーバ経営に関する書籍を用いた勉強会を始めました。今後もさらなる会議の活性化や部門の実績・予定の取りまとめの早期化など、経営管理としてのテーマを推進し、アメーバ経営の浸透を図っていきたいと思います。

アメーバ経営部門 管理責任者(福井統括本部長 兼 福井エリアマネージャー)
永井 勝也 氏

アメーバ経営部門 責任者(総務部兼務)
折口 祐子 氏

  • アメーバ経営倶楽部機関誌「Amoeba Management Report」Vol.15より転載

2016年12月13日

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