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論文掲載|尿細胞の良悪性を識別する病理診断支援AIの開発について
京都府公立大学法人 京都府立医科大学(以下、京都府立医科大学)と、京セラコミュニケーションシステム株式会社(以下、KCCS)、株式会社Rist(以下、Rist)の共同研究グループは、尿細胞の良悪性の識別においてAUC 0.99※という非常に高い識別精度を有する病理診断支援AIを開発しました。また、本研究に関する論文が医学雑誌「BJU International」のオンライン版に掲載されたことをお知らせします。
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AUCは、統計学・医学の分野で識別性能を評価するために使われる指標です
研究の背景
- 国立がん研究センターの統計では、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は2人に1人にものぼり(2017年データに基づく)、同研究センターの統計予測では、2020年の新規がんの罹患数は約101万件と予測されています。がんの確定診断には患者から検査や手術などで採取された組織や細胞を病理医が顕微鏡で観察する病理診断が必要になりますが、病理医は約2,600名と他の専門医に比べ人数が少なく、病理医の負荷の高さが課題になっています。
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京都府立医科大学とKCCS、Ristの共同研究グループでは、尿細胞の病理診断(尿細胞診)において細胞の良悪性を識別するAIを共同研究しています。尿細胞診は膀胱がんや腎盂がんといった尿路上皮がんが疑われる場合に行われる病理診断で、低侵襲で細胞を採取できるため検査数が多いのが実情です。
- このような状況を受け、私たちは尿細胞診の負荷軽減を目指し、AIを活用した病理診断支援システムの開発を行っています。
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本研究の内容と成果
本研究では、京都府立医科大学より提供された尿路上皮がんと診断された患者の尿細胞診スライドをもとに、熟練の細胞検査士2名の評価が一致した尿細胞画像4,637枚のデータを深層学習することで、尿細胞画像を陰性(良性)と陽性(悪性・異形)に分類するAIを開発しました。
開発した尿細胞の良悪性識別AIは、AUC 0.99、感度97%、特異度95%という結果で、前述のデータ作成者とは別の3名の細胞検査士が診断した結果と同等の識別精度を達成しました。
また本研究成果ついて、医学雑誌「BJU International」のオンライン版(2021年6月18日付)で掲載されました。
KCCSとRistは、今後もAIを活用した取り組みにより、社会課題の解決に貢献して参ります。
掲載論文
論文名
Urine cell image recognition using a deep learning model for an automated slide evaluation system
著者・所属
- 京都府公立大学法人 京都府立医科大学
泌尿器外科学:金子 正大、辻 恵介、浮村 理
人体病理学:小西 英一
医学フォトニクス講座:髙松 哲郎
生物統計学:手良向 聡 - 京セラコミュニケーションシステム株式会社
増田 景一、上野 賢吾、辺見 航平 - 株式会社Rist
藤田 亮、中川 晶太、鈴木 健聖、井ノ上 雄一
掲載誌
BJU International(DOI:10.1111/bju.15518)
掲載ページURL
https://bjui-journals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/bju.15518
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