自動運転を支える無線ネットワーク技術

高速大容量・低遅延などを特長とする5G(第5世代移動通信システム)の実用化や、AI(人工知能)など先端IT技術の開発が進む中、人間の運転操作を必要とせず、自律的に車の制御・走行を行う「自動運転」に注目が集まっています。自動運転のメリットは、交通事故の減少や、渋滞の解消、公共交通への応用などが挙げられます。特に少子高齢化や過疎化が進む地方では、バスなどの運転士不足の深刻化、不採算路線を維持するための財政負担の拡大などにより公共交通の縮小・衰退が課題になっており、公共サービスの存続という観点からも自動運転への期待が高まっています。

しかし、自動運転を実用化し安全に運用するには、遠隔から車の状況をリアルタイムで監視し、映像や周辺情報などの膨大なデータを高速で送受信する必要があります。そのため自動運転に向けた通信インフラ敷設は大変重要ですが、人口の少ない地域や山間部などでは整備が困難な場合もあります。

京セラコミュニケーションシステムは、自動運転時代における通信の課題を解決することを目指し、移動体基地局建設や自治体の情報通信基盤整備などを通じて蓄積した技術とノウハウを活かして、通信インフラが整備しきれていない場所でも、大容量のデータを扱うことのできるマルチホップ無線ネットワークシステムの開発に取り組んでいます。

バス自動運転の技術実証に参加

京セラコミュニケーションシステムは2019年に宮城県気仙沼市で行われた、バス自動運転の技術実証に参加しました。本技術実証はJR東日本が主催する「モビリティ変革コンソーシアム」において進められているプロジェクトの一つです。自動運転に関する各種技術の検証を行うことを目的に、京セラコミュニケーションシステム、京セラを含む10社がタッグを組み、JR東日本の気仙沼線BRT専用道で大型自動運転バスを使用して実施されました。

BRT自動運転車
無線設備とBRT自動運転車

BRT(Bus Rapid Transit)とは、連節バス、PTPS(公共車両優先システム)、バス専用道、バスレーンなどを組み合わせることで、速達性・定時性の確保や輸送能力の増大が可能となる高次の機能を備えたバスシステムです。JR東日本では2011年の東日本大震災による津波で壊滅的な被害を受けた気仙沼線の早期復旧を目指し、2012年12月からBRTを採用しています。しかし労働人口の減少などを背景に、今後より一層、運転手の確保が難しくなることが想定され、BRT運行の自動化はその解決手段の一つとして大きな期待が寄せられています。

京セラコミュニケーションシステムは本技術実証において、車両の位置・映像・信号情報などを送受信する無線通信網に加え、各種機器を接続する際のセキュリティとデータを収集するクラウドも構築しています。

マルチホップ伝送を用いて構築した無線通信網

道路に沿って無線通信を可能にしようとすると、線状の無線通信網が必要になります。京セラコミュニケーションシステムは760MHz帯ITS無線と長距離Wi-Fi技術(4.9GHz帯)などを組み合わせたマルチホップ伝送で無線エリア構築を実現しました。地方公共交通では、LTEが圏外になるようなトンネル、山間部を走ることも多くありますが、京セラコミュニケーションシステムの技術により路線に光ファイバーを敷設するよりも低コストでの通信が可能になります。

ITS無線用アンテナとマルチホップ伝送用アンテナ

実用構成例

京セラコミュニケーションシステムは、自動運転に活用できるマルチホップ無線ネットワークシステムをご提案しています。すでに導入実績のある自治体向けの「広帯域無線アクセスシステム」と組み合わせてご提供することを検討しています。

広帯域無線アクセスシステム

自治体の防災・情報インフラに、ITSや自動運転技術を取り入れることで、運転手の高齢化や免許返納などに悩む地域の人々が、安心して利用できる交通手段をご提供します。

自治体の防災・情報インフラにITSや5G、自動運転技術を取り入れた構成例

今後、京セラコミュニケーションシステムでは、ITS無線のほかに5G無線を組み合わせ、地域の人々の安心に貢献できる自動運転の実用化に取り組んで参ります。

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