[セフリ×グルーバー×KCCS]アウトドアWebマガジン「.HYAKKEI」を通じてスマートフォン時代のオウンドメディアのあり方を探る

2015年08月25日

スマートフォン向け登山・アウトドア用地図アプリ「YAMAP(ヤマップ)」を提供する株式会社セフリ(セフリ)は2015年7月、株式会社グル―バー(グル―バー)、京セラコミュニケーションシステム株式会社(KCCS)と共同で、「自然を楽しもう!」をコンセプトとするアウトドアWebマガジン「.HYAKKEI(ドットヒャッケイ)」を立ち上げた。

この新しいメディアでは、セフリが企画と「YAMAP」のコミュニティプラットフォームとの連携を担当。グルーバーは編集とコンテンツ制作、KCCSはコンテンツ制作のためのテキスト解析や広告配信といった、それぞれの得意分野を活かしてタッグを組むことで、スマートフォンを主舞台とするオウンドメディアの新たな可能性の模索が行われている。

「.HYAKKEI」トップページ

1.3社連携による相乗効果で"見てもらえる"メディア事業の実現

「本当の経験」「本物の情報」に触れることができる "登山・アウトドア"といったレジャーをもっと気軽に、もっと安全に楽しむ仕組みを提供したい。このような思いから、2013年にスマートフォン向け登山・アウトドア用地図アプリ「YAMAP(ヤマップ)」をリリースし、すでに11万人ものユーザを獲得しているセフリ。同社 代表取締役である春山 慶彦氏が「登山のほか、スキーやスノボ、サイクリング、キャンプなど、さまざまな切り口でアウトドアの楽しみ方を伝え、もっと気軽にアウトドアを楽しんでもらえるよう、いずれメディア事業に進出したいと考えていました」と語るように、「YAMAP」のリリース時点からオウンドメディアの立ち上げは視野に入れられていたという。

株式会社セフリ 代表取締役 春山 慶彦氏

それではなぜ、自社単独での立ち上げ・構築ではなく、グル―バー、KCCSと共同での取り組みを選択したのか。春山氏はその理由として「当社が有するコミュニティと、グル―バー、KCCSの技術やノウハウの組み合わせに大きな可能性を感じました。グル―バーのサポートにより新鮮でバラエティに富んだコンテンツを発信し、KCCSのテキスト解析技術をベースに継続的なブラッシュアップを行っていくことで、ユーザに"見てもらえる"メディア事業を実現できると考えました」と、3社連携による相乗効果への期待を挙げている。

それでは、スマートデバイスのメディア支援事業などを手がけるグル―バーにとって、「.HYAKKEI」の取り組みはどのような意味を持つのか。グル―バー 代表取締役CVOの千島 航太氏は「当社が"大人の男"をターゲットに運営している自社メディア『ACCETORY(アクセトリー)』などで培った経験やノウハウを基に、外部メディアをサポートしていく取り組みの1つとして、11万人ものユーザを有する「YAMAP」、またテキスト解析やインターネット広告配信の分野で高い技術力を持つKCCSとの連携に大きな魅力を感じました」と語る。

株式会社グル―バー 代表取締役CVO 千島 航太氏

一方、KCCS インターネットメディア事業本部 事業開発室 技術開発部 部長の福島 剛はこの取り組みについて、「直近のニュースなどから抽出したトレンドキーワードなどをベースに、ユーザのニーズに合致する情報をスマートフォン時代に即した形で要約して提供し、さらにその反応・反響を分析してブラッシュアップを図るPDCAサイクルを確立していきたいと考えています」と語る。

インターネットメディア事業本部 事業開発室 技術開発部 部長 福島 剛

3社の役割

3社の役割

2.スマートフォンを通じて実現するオウンドメディアの新しいカタチ

近年、インターネットに接続するデバイスとして、スマートフォンが急速にその存在感を増す中、スマートフォン向けアプリ「YAMAP」との連携をベースに立ち上げられた「.HYAKKEI」では、アクセスの大半がスマートフォンを通じて行われることが想定される。では、スマートフォンでのアクセスが中心となるオウンドメディアはどのようなことを意識すべきなのか。この点について、グル―バー マーケティング事業本部 本部長の羽田 裕明氏は、「スマホの画面上で表示されるタイムラインの中で、いかにアイキャッチとなるものを表示できるかはすでに多くのメディア運営者の方々がおっしゃっている通り重要だと考えています。特に『.HYAKKEI』では見出しの工夫とともに、画像によって自然の雄大さやアウトドアの楽しさをいかに伝えられるかがカギになると思います」と語っている。

株式会社グル―バー マーケティング事業本部 本部長 羽田 裕明氏

「.HYAKKEI」のページイメージ

「.HYAKKEI」のページイメージ

また「.HYAKKEI」ではスマートフォンならではの機能の活用も視野に入れられている。「ユーザの属性や閲覧・利用履歴などから導かれる興味・関心分野に、スマホのGPS機能を活用して得られる位置情報も組み合わせて、ユーザのシチュエーションに即した情報を配信することで、ユーザに有益な情報を届けられるのではないかと考えています」とKCCSの福島は語る。このようなGPS機能を活用したタイムリーな情報配信は近い将来、実現すべき取り組みとされている。

さらに本格的なユーザ参加型オウンドメディアの実現も「.HYAKKEI」の大きなテーマだ。そもそも「YAMAP」はユーザとのコミュニケーションを重視し、ユーザの意見を最大限フィードバックすることで距離を縮め、クチコミを中心にユーザを増やしてきた、いわば“ユーザとともに作り上げてきた”アプリだ。この方向性は「.HYAKKEI」でも共通しており、目指すところは一方通行の情報発信ではなく、ユーザを巻き込んだ展開である。その具体的な取り組みとして、例えばSNSを通じた「.HYAKKEIアンバサダー」の募集を行っている。
「『.HYAKKEI』の立ち上げから数日間で相当数の応募があり、応募者の中には“YAMAPの発展のためなら、協力は惜しみません”とおっしゃる方もいて、その絆の強さに驚かされました。また今後は『.HYAKKEI』自体をユーザと一緒に作っていくためにも、ユーザ投稿型のコンテンツ開発も仕掛けていきます」と羽田氏は語る。

3.収益力のあるオウンドメディアを追求

このように「YAMAP」で培われたユーザとの濃密なコミュニケーションを「.HYAKKEI」につなげていく取り組みは順調にスタートを切っているが、「.HYAKKEI」はメディア“事業”として立ち上げられたものであり、当然のことながら収益性を高めることも大きなテーマだ。その具体的な方策としては、ユーザ数などが一定の水準に達した段階で旅行やアウトドア商品など、関連分野の広告配信を本格化することが計画されている。しかしグルーバーの千島航太氏が「スマホでは配信される広告が“ユーザにとって関係のない”“目障り”なものとして敬遠される傾向があります」と語るように、スマートフォンでのアクセスが中心となるオウンドメディアで広告効果を向上することは容易なことではない。その解決策の1つとして、KCCSの広告配信サービス「KANADE DSP」で、ネイティブアド(コンテンツ化した広告)などスマートフォンに適した広告を配信することが、「.HYAKKEI」の収益性向上に貢献することは想像に難くない。さらに「.HYAKKEI」が目指すGPS機能を活用したタイムリーな情報配信と連携した広告配信も、大きな成果が期待できる取り組みになると考えられる。

取材時の様子

「.HYAKKEI」でいわば“縁の下の力持ち”としての役割を担うグルーバーとKCCSは、オウンドメディアの構築や制作、広告配信など、セフリと同様の取り組みを他企業でも幅広く展開していくことを目指している。「魅力的なコンテンツを持っていながら、スマホ対応を行っておらず、ユーザごとにパーソナライズされていない企業サイトも多いと感じています」とKCCSの福島が語るように、潜在的にスマートフォン向けオウンドメディアによるユーザコミュニケーションの強化を必要とする企業は数多く存在すると考えられる。このような企業に対して、グルーバーとKCCSが「.HYAKKEI」を通じて得るノウハウや知見を活かした支援ができるよう取り組んでいく考えだ。

取材時期:2015年7月

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