開発者に聞く、「The Amoeba(ザ・アメーバ)」の真価

2015年03月25日

経営の実態を表す数字をタイムリーに提供 部門別採算の徹底で、経営改善に差をつけるERP「The Amoeba(ザ・アメーバ)」

アメーバ経営の円滑で効率的な運用をサポートするために企画・開発されたERPパッケージが「The Amoeba」だ。2013年9月に再上場を果たした日本航空に部門別採算制度とともに導入され、経営再建にその威力を発揮した。最も顕著な独自性は、経営の実態を表す精度の高い数字をタイムリーに提供できる点にある。
アメーバとよばれる部門ごとの日々の活動成果を表す仕組みとして提供され、今では部門別採算を実践するためのERPとして多くの経営者の注目を集め、アメーバ経営を導入していない企業も「The Amoeba」を有効活用し、経営改善に取り組んでいる。
企画・開発段階から「The Amoeba」に携わってきた京セラコミュニケーションシステム株式会社(KCCS)ICT事業本部 ERPソリューション事業部長・青木克真氏に、その真価を聞いた。

青木 克真(Katsumasa Aoki)

ICT事業本部
ERPソリューション事業部長

1987年京セラ入社、2016年京セラコミュニケーションシステムへ転籍。
2018年ICT事業本部 ERPソリューション事業部長。
京セラの基幹システムの開発から、社外のお客様へのSI開発を経て、2002年より「The Amoeba」の企画、開発を担当。一般企業から海外、医療介護業界などアメーバ経営を実践される全ての業種業態のお客様をITの面から支援。

Q: 「The Amoeba」とはどのような情報システムですか

「The Amoeba」は、京セラの情報システムをベースにアメーバ経営の運用に適した情報システムとして、最新の技術を用い開発したERP(統合基幹業務システム)です。このシステムは、発生ベースで実績情報を捉え、採算表(管理会計)と財務会計の双方の数字をつくる仕組み(コンピュータシステムおよび運用体制)を構築することで管理会計と財務会計の整合性をとります。

従って、経営トップや役員をはじめ、本部長、事業部長を含むすべての幹部、リーダーが、タイムリーな現場のデータでもある管理会計から必要な経営情報を得て、日々の経営判断を可能にします。また、幹部から一般社員まで、組織の全員が同じデータ・数字をベースに採算を考え経営へ参加する全員参加の経営を実現します。

Q: 「The Amoeba」はどのようなコンセプトで開発されたのでしょうか

現代の企業経営にとってコンピュータシステムは不可欠です。それは「アメーバ経営」を運用する上でも変わりはありません。企業経営にとってコンピュータシステムの重要性が増すにつれて、私たちがアメーバ経営の導入をお手伝いさせていただいたお客様から、アメーバ経営に即した経営情報が捉えられるコンピュータシステムを求める声が日増しに強くなっていました。
そこで、京セラの情報システムのノウハウとKCCSが長年蓄積してきた技術や経験を活かし、アメーバ経営の運用に合致した統合基幹業務システムとして開発したのが「The Amoeba(ザ・アメーバ)」です。「The Amoeba」の開発にあたっては、アメーバ経営を支援するERPパッケージとはどのような情報システムかと考えた結果、以下の4つの開発コンセプトにたどり着きました。

  • アメーバ(現場)に必要な情報をタイムリーに提供
  • 管理会計と財務会計の有機的連携
  • コード体系の統一による情報責任の明確化と柔軟性の実現
  • オープン・スタンダードな情報技術の活用

それぞれのコンセプトの詳細についてですが、第一は、「アメーバ(現場)に必要な情報をタイムリーに提供」することです。各部門が月初に立てた予定を達成するために、日々の活動成果をタイムリーに把握できるようにすることです。
第二は、「管理会計と財務会計の有機的連携」です。「The Amoeba」によって集計された数字を元に、経営者が経営判断をできるように財務会計との一致を目指しました。
第三は、「コード体系の統一による情報責任の明確化と柔軟性の実現」です。部門別採算の運用にあたって、個々のデータが発生した部門を明確にするとともに、異なるシステムのデータをまとめて見るときもコード変換の手間をなくすことを目指しました。また、市場動向などに合わせて組織を改編したときにプログラム変更が必要になると、日次データのフィードバックが滞ってしまいます。そこでコード体系を統一し柔軟なシステムとなるよう開発を進めました。
第四は、「オープン・スタンダードな情報技術の活用」です。「The Amoeba」のモジュールを一部だけ既存システムと連結して有効活用したり、モジュールを順次段階的に増やしたりすることもできるよう、オープン化と標準化をコンセプトに加えました。

Q: 特徴的な機能について教えて下さい

アメーバ経営では、採算表と呼ばれる家計簿のような帳簿を用いて、各アメーバのリーダーを中心に利益向上を最優先に考えます。「The Amoeba」には、この採算表を運用するための独自のシステムとして、採算表システムがあります。これは部門別採算の管理会計を運用するシステムで、年度計画や月次予定、実績、数か月先の見通しなどの採算表の作成、照会、出力機能をパッケージ化したものです。
これまで100社以上の企業様に「The Amoeba」を導入いただいておりますが、元の情報は既存のシステムを利用していても、採算表システムを追加導入して、部門別採算のPDCAサイクルをタイムリーに回すために活用して頂くケースが多くあります。
社内売買システムも部門別採算において大切です。部門間の売買における伝票処理、数字の捉え方を、あたかも社外の企業との取引同様に管理できる特徴的な機能といえます。社内売買という言葉になじみのないサービス業においては、「協力対価」という名称で、部門間の取引が分かるようにしています。
もう一つ、受注生産システムでは、一つの売上に対し、営業・製造の両部門において利益管理を行える仕組みになっています。一般的なシステムでは、営業部門では売上だけ、製造部門では材料費などの原価だけしか見えず、どちらも採算(利益)を実感できないまま仕事が進みがちです。一つの売上に対して、製造部門では製造原価と営業部門への営業口銭を差し引いて製造部門の採算を明らかにし、営業部門では営業口銭を収入とし、営業経費を差し引いて採算を明らかにする。こうしたアメーバ経営における利益管理を、システム上で支援する仕組みになっています。

  • 部署・役職などは掲載当時のものであり、現在のものとは異なる場合があります

Q: 「The Amoeba」が導入されることによって、経営にはどのような効果がもたらされますか?

「The Amoeba」の導入により、現場で発生した情報がタイムリーにフィードバックされるため、経営トップは現場の隅々まで把握することができます。また、採算表(管理会計)に表れる数字は財務会計と整合性がとれているため、現場のリーダーにもわかりやい採算表上の数字を元にコミュニケーションがとれ部門で抱えている課題解決が早まります。
リーダーの育成という効果も期待できます。部門別採算によって、各事業を担当するリーダーの責任と成果も明確になりますから、彼らの数字に対する意識と採算改善への意思が強くなることは間違いないでしょう。例えば製造部門を担当するリーダーなら、従来のKPIは製造原価であり、その低減に専心していたかもしれません。しかし採算を改善するには、あわせて売上増も目指し、製品の性能・価格・品質などを総合的に考えるようになります。そして自身の判断に基づく目標を立案し、その達成に向け部下に説明し、行動を促すべくリーダーシップを発揮することで、経営能力が高まっていくわけです。
一般の社員にとっても、全社の業績に対する所属部門の貢献度、ひいては「自分がどれだけ稼いだか」を認識できるようになります。経営幹部と同じく、採算改善への気持ちも強くなり、組織内のコミュニケーションも活性化するでしょう。例えば、製造部門と営業部門の社員が受注獲得という共通の目標に向かって顧客への見積価格を話し合ったり、営業活動に製造の技術者が同行するようになったり、部門間連携がより密接なものに変化していくと思います。
このように、「人」の意識と行動の変化を促す情報を、高い精度で、タイムリーかつスピーディに提供するためのシステムとして、「The Amoeba」は、お役立ていただけると確信しています。

Q: 日本航空様の再建では「The Amoeba」が大きな威力を発揮したと伺いました。具体的にどのような貢献をされたのでしょうか。

2010年1月より、経営破綻された日本航空様の経営再建には京セラの稲盛和夫名誉会長が会長としてその任に当たられました。稲盛会長は、フィロソフィの浸透と部門別採算制度の導入による経営再建を指揮されました。そして弊社は部門別採算制度の導入に取り組むことになりました。そのためには組織改革と並行してスピーディに経営数字を把握できる仕組みの構築が不可欠であり、そこで「The Amoeba」の導入が必要になったのです。
当時、日本航空様の経営数字は、四半期ごとの財務数字、あるいは月次でも1カ月程度の遅れで経営数字を纏めておられました。また、日本航空様の既存のシステムでは、部門別に管理する概念がありませんでした。そこで、「The Amoeba」の一部をカスタマイズし、日本航空様の既存システムと連携させ、各部門の収入や協力対価、日々の経費を日報としてフィードバックしたり、従来の路線別にとどまらず便別の粗利までが分かるようにしました。
運航・客室・空港・整備といった部門には外部から直接得る収入がないため、1便あたりのコストをベースに単価を設定し、運航諸元情報に応じて、各便が飛んだときに収入を計上する協力対価の仕組みにしました。こうしたシステムを構築することで、部門別採算を運営するための環境を整えました。
「The Amoeba」の活用によって日々の数字はもとより、1便あたりの採算まで明らかとなり、利益に反するロスの発生源も即座に見つかるようになりました。1便あたりの収支を翌日に算出できるシステムに加え、すべての部門の月別収支を細かく見られるようになったことで、多くの社員が利益について考えるようになり、創意工夫で結果を出すようになっていきました。1便ごとの収支が見えるので、どうすれば満席にできて収支を向上させられるか、常に考えるようになっています。便別の利用客数に応じ使用機材を通常より小型の機種に変更するなど、さまざまなコスト削減策が実行可能となり、一気に全社の採算が改善していったのです。

Q: 「The Amoeba」を導入された企業で、経営が改善された事例はありますか?

例えば、ある製造業の企業様では、生産管理のシステムに組み込まれた原材料の自動発注機能が欠品防止を優先して働いてしまい、余剰で発注されていました。そこで「The Amoeba」を導入することにより、製品の販売・出荷とともに原材料購入も日次集計することができ、原材料在庫の余剰を迅速に察知し、無駄な発注を抑え、採算を改善した例があります。
また、経理部門の例では、従来月末に集中していた集計作業が、「The Amoeba」導入後に平準化されたうえ、月次の決算も短時間でまとまるといった効果を評価する声もお聞きしています。
こうした改善ができるのは、課題が早く見つかり、早く手が打てるという「The Amoeba」導入のメリットにあります。PDCAサイクルを日次で回すことができるため経営改善が図られるというのは「The Amoeba」ならではといえ、経営への貢献度が高いと思います。
自社の既存システムでアメーバ経営を実践されている企業様もいらっしゃいますが、「The Amoeba」をお使いいただくメリットは、より信頼性の高い、詳細な数字をタイムリーに提供できる点にあります。アメーバ経営のルールに基づいて経営の実態を表す採算の数字が日々管理され、見たいときに必要な情報が全て揃っている環境を自社システムで効率よく実現するのは、必ずしも容易でないでしょう。「The Amoeba」をご活用いただくことで、アメーバ経営の真価を最大限に享受していただくことができると思います。

部門別に集計した実績の確認画面。組織ごとに予実採算表も確認できる。

Q: アメーバ経営を導入していない企業での活用は可能でしょうか

アメーバ経営を導入していなくても「The Amoeba」は活用できます。実は弊社のお客様でアメーバ経営を導入されていないのですが、「The Amoeba」をフルパッケージで活用されている企業様がおられます。大手自動車メーカーの部品メーカーの企業様なのですが、「The Amoeba」を活用し社内データを一本化、オペレーションの精度が向上し、お客様での不良を大幅に削減されました。
近年、情報システムには業務の合理化だけでなく、ビッグデータを活用した売上拡大などの戦略的な機能も求められていると思います。それも非常に重要ですが、「The Amoeba」は自社のビジネスフローを整備し、各部門の役割責任を明確にしたうえで、活動成果を正確かつタイムリーにフィードバックします。そうすることで従業員自らが所属部門の課題を見つけ採算改善に取り組むチャレンジをサポートするのです。
いいかえれば「人」を中心に置くアメーバ経営をITで支援するわけですが、自分たちの仕事の成果を正しく把握し改善につなげることは、どんな経営スタイルであれ重要に違いありません。業務の表面的な効率アップよりも、信頼性あるデータに基づいて経営改善を目指す企業には、必ずお役に立つシステムです。新たな情報システムをお考えの際は、ぜひ「The Amoeba」をご検討いただければと思います。

  • 部署・役職などは掲載当時のものであり、現在のものとは異なる場合があります

掲載されている情報は、発表日現在の情報です。最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。