2015年12月28日

京セラコミュニケーションシステム株式会社
堀 直樹

最近、電車などに乗っていると時々奇妙な光景に出くわします。一列の席に座っている人全員がスマホを見て、何やら検索したり、メールを打っている姿。その席の前にお年寄りが座れずに立っていて、座っている人たちが詰めればあと1~2人座れそうですが、誰もそれに気がつきません。

スマホはコミュニケーションツールであり、簡単にメールができたり情報も手に入る便利なものです。そして、皆、コミュニケーションを取るのに必死になっています。しかし、目の前の人や状況に対して、気配りやコミュニケーションができていないのではないかと感じてしまいます。

コミュニケーションは人と人がお互いにわかり合ったり、意思疎通を図るものであると思いますが、こうした、目の前の現実の人と人との関わりが希薄になっているのかもしれません。コミュニケーションツールを使っているのではなく、ツールに使われているようにも見えます。

企業においても同じようなことが起こります。すぐそばに座っているのにメールで依頼などが来たりします。本人が来て、笑顔で依頼をしてくれれば、多少無理でもこちらも「よし、頑張って受けるよ」という気持ちになりますが、メールでの依頼だと無味乾燥な気がして気持ちが入りにくいこともあります。また、言いにくい報告や連絡などもメールで来る傾向も感じられます。

メールは文字なので読むほうも大変です。コミュニケーションは文章だけではなく、表情や言葉のトーンでも伝えられるものがあります。また、文章は言葉に比べると情報量が少なく、直接あるいは電話で話したりする方が、伝えられることが多くあるように感じます。

12月終盤となり本年もそろそろ終わります。新しい年を迎えるにあたり、1年を振り返る時であり、また、新しく始まる年の決意を新たにする時と言えるでしょう。そして、3月決算の企業であれば、来期の年間計画について考え、具体的に構想する時期でもあります。正月休みはそういう心を新たにし構想を描くには適している時期だと思います。

しかし、大切なのは描いた思いやプランをメンバーと共有していく努力をしていかねばならないということです。簡単にコミュニケーションできるツールや方法はありますが、単に数字だけを伝えたり、資料を配るだけ、メールでメッセージを送るだけではなく、直接メンバーに語り掛け、自分の思いを伝え、相手の表情をくみ取り、まだ、思いが伝わっていなければさらに伝えていくということを、手間暇をかけて行うことが必要ではないかと思います。

この時期は忘年会や新年会などのコンパも多く開催されると思います。それも、自分の思いを伝えるにはいい機会です。京セラ名誉会長 稲盛和夫は、可能な限り各部門の忘年会などのコンパに出続け、その場で皆の気持ちを察しつつ、直接、自分の思いを語り理解してもらう努力をし続けました。

稲盛は、「皆さんが自分の会社を画期的に変えていこうと思うならば、心血を注いでフィロソフィの浸透をはからなければなりません。そのひとつの手段としてコンパがあるわけです。コンパのときには社長やリーダーが、血を吐くような思いで、全神経と全情熱をかけて社員たちに語りかけていく。その真剣さなのです。一杯飲んでかるい話をするのがコンパではありません。血を吐くような思いで訴えていく。その社長やリーダーの姿を見て、感動する話を必死にしてくれる姿を見て、社員たちは変わってくれるのです。」と語っておられます。

コミュニケーションが必要と騒がれる中で、そのツールのみが脚光を浴びている気がします。そのツールに頼るのではなく、伝える相手の表情を見て自らの思いを自ら伝える、そのためには多少非効率に思われるかもしれませんが、足を運び時間を取って直接会う、ということが重要だと思います。

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