小柳建設株式会社アメーバ経営コンサルティング・人事コンサルティング

人事制度の導入によりフィロソフィの浸透を図る

「父を助けたい」2つの誓いを決意

当社の創業は1945年11月です。創業者の祖父が、「小柳組」として材木業を始めました。その後、建設業へと業態を変えて法人化します。1978年に父が経営を引き継ぎ、カリスマ的な手腕によって、会社は成長の勢いを増していきました。やがて、バブル崩壊のあおりを受け、大きな経営危機を経験しますが、おかげさまで本年創業70周年を迎えることができました。現在は土木・建築・埋蔵文化財調査・スイミングスクールの事業、介護事業をベースに事業展開を行っています。

実は、私はもともと後継者ではありませんでした。4人兄弟の三男坊として生まれ、幼い頃からわが道を行くタイプでした。2008年2月、新卒で入社した金融会社に勤めていた私に、「長男が出ていった」と父から連絡がありました。後継者であった長男が、父と大喧嘩して家を飛び出したのです。私は、バブル崩壊時、全国を飛び回り、夜中も神社でお百度を踏むなど、社員を守るために必死で努力していた父の姿を見ていました。電話をもらった時すぐに「父を助けたい」という一心で、「手伝わせてもらえませんか」と申し出ていました。

小柳建設株式会社
代表取締役社長
小柳 卓蔵 氏

こうして、私は小柳建設に入社しました。その時に、自分自身に2つの誓いを立てたのです。1つ目は、「社長には絶対服従」するということです。経営者の子供は、親子関係の甘えから経営トップである親にたて突いたり、時には衝突したり、会社にとって悪影響を及ぼす可能性があると長男の姿を見て感じていました。トップの威厳を保ち、社長に求心力を持たせるために、私なりに考えた末のことでした。2つ目は、「社内の嫌われ者になる」ことです。社員を叱る幹部やリーダーがいないことが父の悩みであり、トップを嫌われ者にしてはならないと考えました。

当時の私は、技術も知識も経験もありませんでしたから、管理部門の一角となる人事部門の仕事から勉強しました。従業員の名前と顔を一致させることからスタートし、給与計算や採用活動に携わりながら、数ヵ月のうちに管理部門全体を取り仕切るようになりました。

盛和塾での学びを基に経営理念を策定

こうして、次第に社内が見えるようになると、組織的な欠陥に気がつくようになりました。社長の鶴の一声がなければ従業員は動かず、一人ひとりが考えて仕事ができる環境にはなっていなかったのです。幹部・リーダーの立場に立つ者であってもその自覚を持つ者は多くありませんでした。

それもそのはずで、当社には、体系的な人事制度やリーダー研修のようなものはありませんでした。加えて、社長の感覚的な判断によってリーダーへと任命されており、任命後もリーダーへの面談や評価はされておらず、リーダーとしての考え方を知ることなく、その立場を任されていたのです。

そこで、すべての従業員が自ら考えて行動し、チームとして仕事ができるように組織論を学ぼうと考えました。そして、参考となる本を探すために立ち寄った書店で、運命的な出会いをしたのです。それは、京セラ創業者である稲盛和夫氏の「アメーバ経営」という本でした。教育を兼ね備えた精緻な組織づくりと同時に、「人の心」という精神面にも触れられている稲盛氏の考え方に一気に引き込まれ、2010年に盛和塾に入塾しました。

その年の夏、盛和塾塾長例会に初参加した時のこと、「幹部の教育はどうしたらよいでしょうか」と思い切って稲盛塾長に話しかけました。

塾長は「あなたの会社にフィロソフィはあるのですか」と問われました。私はフィロソフィ手帳のことだと思い、「ありません」と答えました。塾長からは「話にならん」と一蹴されてしまいました。私は一生懸命考え、「塾長はフィロソフィ手帳のことではなく、我社に哲学や理念はあるのかと問われたのだ」と理解しました。どちらにしても、当社には哲学や理念もありません。しかしながら、調べてみると創業者の思いが社是として存在していたことが分かりました。私はこれをベースに経営理念を策定しました。
そして、正しいことを貫きたいという思いから、「義を見てせざるは、勇なきなり」と社是も一新しました。

塾長の教えを経営の軸に置き、社内で実践

さらに、2011年には稲盛塾長への経営問答の機会を頂戴し、社長である父との関係について質問をしました。私は入社以来「社長には絶対服従」の誓いの下、父との衝突は一度もありませんでした。しかし、盛和塾の先輩塾生からは「父親とぶつかるべき、ケンカすべきだ」という意見を少なからずいただいていました。そこで私は、その答えを塾長に求めたのです。

塾長は、「あなたの言う通り。素晴らしい経営をされているお父さんに、入社間もないあなたが、物申すなどやってはいけない。まずは学びなさい」とおっしゃいました。塾長の答えに大変な安堵感を覚えると同時に、父からも盛和塾での学びと実践に対してより理解を示してくれるようになり、私は経営の軸を塾長の教えに置き、純粋に実践することを心に決めました。

さっそく私は幹部層に対して、週に一度「フィロソフィ」の勉強会を行いました。しかしながら結果は全くの無反応でした。親子ほどの年齢の離れた私が、京セラフィロソフィをベースに立派な話をしたところで、誰も耳を貸さないのは当然と言えば当然の事だったのかもしれません。

それでも私は諦めずに、次はコンパを行いました。管理部門の責任者として同じ部門の30才までの若手社員を集めた、月に一度、参加費500円の勉強会コンパでした。幹部層からの勉強会に対する無反応に内心は不安でしたが、新卒に近い社員ほど吸収が早く、学びを素直に実践してくれ、日々の言葉や行動が変わっていく姿に、私は嬉しくてなりませんでした。このようにして、私は少しずつ実践を重ねていったのです。

月次決算、フィロソフィの必要性を実感

しかしながら、社内の状況は以前のままでした。「経常利益率は最低でも10%」という塾長の考え方を社内で提唱し始めたものの、賛同してくれたのは父だけで、多くの社員の反応は冷たいものでした。その理由は、当社の業績にありました。建設業に携わる中小企業の多くは、建造物が完成して引き渡しをした際に売上計上をする「完成基準」を会計基準としています。一方で、工事期間が2年以上にわたる大規模物件を扱う会社や上場企業では、工事の進捗によって売上計上を行う「進行基準」を採用していました。

当社でも、工事期間が2年を超える物件を扱うことが多くなりましたが、完成基準によって売上を計上しますから、工事が終わった年とそうでない年で毎年の売上が乱高下していました。私は月次決算の必要性を問題提起しましたが、社員からは「工事の種類ごとで採算を見ているし、最初に実行予算でいくら利益が出るか分かっているから、月次決算など意味がない」と返ってきました。必死に警鐘を鳴らしても、「建設業は経常利益率で3%出ればよい方なのに、これ以上望むとは何事だ」という雰囲気でした。管理部門の社内での存在価値は低く、現場の社員から大きな声を上げられれば、簡単に従ってしまう有様でした。

私はメンバーに対して、「管理部門は他部門から嫌われる役割を担わなければならない。皆さんが心を正しく強く持ってもらうことが重要だ」と京セラフィロソフィをベースに社内に働きかけていこうと訴えました。旧態依然で業務を行ってきた社員の中には会社を去っていくものもいましたが、思いを共有できる人が残ってくれ、何よりフィロソフィを広めようとする社員が増えていきました。

父の後押しを受けアメーバ経営を導入

こうした中で2012年1月、アメーバ経営を導入します。私は、父に対して「建設業のどんぶり勘定を続けていては未来はない。会社の基礎工事をするのは今しかない」とアメーバ経営の必要性を訴えました。父はそんな私の背中を押してくれました。

アメーバ経営を導入する以前は、「完成工事高に対して、これくらいの粗利益が出るだろう」としか掴んでおらず、減価償却費や水道光熱費などの費用については、直接工事費ではないという理由から見ることさえもありませんでした。しかし、採算表によって現場の数字を細かく見るようになったことで、「組織を動かしやすくなり、部下を育てやすくなった」と言ってくれるリーダーも出てきました。

一方で、採算表や帳票の形だけを整えることに終始しているリーダーもいました。これまでの業務に加えて新たな社内書類が増え、明確な数値による現場管理、そして部下の教育や評価もしなければならない。ほとんどの部門からは不平不満の嵐で、社内での浸透は遅々として進みませんでした。

アメーバ経営に魂を吹き込むため、再度フィロソフィの浸透を図る

こうした事態は、アメーバ経営をする目的・意義を全従業員に届かせることができていない私の責任であると感じていました。やはり、アメーバ経営に魂を吹き込むためにも、フィロソフィが必要です。そこで、2013年7月から本格的にフィロソフィ策定に取り組み、「経営哲学手帳」を作成して全従業員に配布しました。

フィロソフィ導入と同時期に、私は専務取締役土木本部長を拝命し、現場にも少しずつ足を運び、会議の場ではフィロソフィをベースに話をしました。導入当初は、「フィロソフィについて、朝礼でコメントするのは嫌だ」、「こんな宗教がかった会社は、次の現場が終わったらやめる」、「社長の息子はとんでもない奴だ」などの反発もありました。しかしながら、プレッシャーは多くありましたが、父と父の側近である副社長、そして「若手社員の理解」という後押しもあり、心が折れそうになりながらも諦めずに推し進めました。

京セラ人事制度の導入を決定

また、その浸透ツールとして「京セラ人事制度」の導入を決めました。人事制度導入の動機は明快でした。第一の動機は、当社にはそもそも体系的な人事制度がないということです。第二の動機は、フィロソフィを浸透させるには、フィロソフィと賃金の連動が不可欠と考えたからです。第三の動機は、京セラ人事制度は運用に重きを置いていて、コンサルティングのメニューも運用サポートが厚い点に魅力を感じたからです。制度が構築できても運用できなければ意味がありませんから、人事制度の構築から運用サポートまでをしっかり行っていただけるKCCSにお願いをしたのです。

まずは各事業部から選抜して人事制度構築委員会を発足させました。当初、社員の理解を得るのに苦しんだのは、「役職と給与を分離する」という考え方です。「なぜ重責に就くのに給与が上がらないのか」と反発する声も多くありました。また、これまで人事制度のない環境で育った社員たちは、人を評価することや面談をすることにも不慣れであり、自分の部下から好かれたいという一心で、評価を甘くする者もいました。さらにそのようなリーダー層の姿を見て、「正当な評価をしてもらえないのではないか」と、不安を募らせる部下もいました。

苦境の中、突然の社長就任

そのような中、父は3ヵ月という短い期間に2度の「脳梗塞」に襲われました。奇跡的に2度とも早期に発見され大事には至りませんでしたが、父は「これは天命だ」として、事業承継を決断します。

私は父から呼び出され「2014年6月期から社長を引き継いでほしい」と話をされました。しかし、すぐには承諾できませんでした。経営の神様と称される塾長の真似事を始めてみたものの、アメーバ経営・フィロソフィ・人事制度の浸透は進まず、社員間でさまざまな問題が発生し、しかも父が病に倒れるなど、数々の問題を前に頭を悩ませていたからです。さらには、塾長からの「まずは、お父さんから学びなさい」という言葉も引っかかっていました。

入社してまだ10年も経たない若僧が、100億円の売上と300人もの従業員を抱える会社のトップになるなど、恐れ多いと感じていたのです。しかし、考えを巡らせるほど「フィロソフィはあるのか」という稲盛塾長の言葉が浮かびました。ここで、できない理由を並べるよりも、アメーバ経営、フィロソフィを浸透させて盤石な基礎を築き、父や社員を安心させるためにも、まさにフィロソフィを持って自分がやるべきだと腹を括ったのです。

連結売上5,000億円、高い目標にチャレンジする

私は、社長就任後すぐに、「小柳建設グループ連結売上5,000億円」という高い目標を掲げました。そして、他の事業も伸ばしていくことを宣言しました。2014年12月には新規事業として、介護事業と住宅事業を立ち上げました。これらは、塾長の教えでもある飛び石を打たない得意分野から派生させた事業です。

そして、アメーバ責任者からグループ会社の社長までを範囲とするフィロソフィ研修を始めました。研修は一泊二日で実施し、アメーバ経営の目的意義や会社の歴史を学ぶとともに、私からのフィロソフィの講話、その後、フィロソフィテーマにもとづいてグループ別でディスカッションを行います。フィロソフィ研修の翌日、「次の現場が終わったらやめる」と豪語していた責任者が、「自分が間違っていました。ともに素晴らしい事業部をつくりましょう」と部門長に言ったと聞きました。さらには、それまで反発していたリーダーが朝礼や会議の場で「フィロソフィは大切だ」と語るようになり、涙が出る思いでした。

人事制度についても、仮運用期間を通して、評価者勉強会と評価者会議の経験を重ねてきたことで、リーダー層の評価や面談の能力が向上しています。何より、役割等級基準書によって社内で技術を標準化できるようになったこと、また共通行動指針によりフィロソフィをベースとした行動ができるようになったことは、社員一人ひとりの成長につながっていることを実感します。こうして、社員の心の変化が少しずつ見て取れるようになりました。業績についても、2015年5月期は売上高119億円、営業利益率10%を達成することができました。アメーバ経営、フィロソフィ、京セラ人事制度導入の効果は、数字としてもしっかりと表れてきています。

私は、幼い頃からバスケットボールにいそしんでいました。始めたばかりの時に、父に言われた言葉があります。「上手になりたければ上手な人を真似し、基礎をしっかり教えていただくこと」です。経営もスポーツも人生も、すべて同じではないかと思います。プロフェッショナルからしっかりと基礎を学ぶことで、強い企業をつくれるものと信じています。そのためにも、経営者として、人間として、最大限に心を高めていきたいと考えています。

小柳建設株式会社

1945年創業。本社新潟県三条市。土木・建築をはじめ、埋蔵文化財調査、スイミングスクール、介護事業などを展開。売上119億円(2015年5月決算)、従業員270名。2012年アメーバ経営を導入。

小柳建設株式会社 御一同様【画像】

2016年01月28日

掲載されている情報は、発表日現在の情報です。最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。

導入事例一覧へ戻る

お問い合わせ

KCCSカスタマーサポートセンター

携帯電話・IP電話など
受付時間
9:00〜17:00(土・日・祝日は除く)