特別企画
インタビュー

いよいよ始まる現場でのIoT活用
スマートグラスによる遠隔監視で業務の効率化に挑む

IoT(Internet of Things)が本格化する中、KCCSはメガネ型ウェアラブルデバイス(スマートグラス)を活用した遠隔モニタリングシステムを開発、現場でのトライアル導入を開始した。システムは製造や建設現場での利用を想定し、作業者と管理者が映像と音声を共有、管理者からのメッセージやデータ、画像での指示などがグラスに表示される。KCCSでは活用の第一弾として、メガソーラーの建設候補地の調査や保守などの業務で利用していく予定だ。

INDEX

1.IoT活用の第一弾として、スマートグラス遠隔モニタリングシステムを開発

ネットワークソリューション事業部 IoTサービスグループ グループ長 塩見 拓哉

時計やメガネ、テレビなどさまざまなものがインターネットにつながるIoTが本格化しようとしている。そうした中、KCCSはエンタープライズ市場の成熟化への対応と企業の社会的使命としてのICT活用領域の拡大という観点から、IoTへの取り組みをスタートさせた。KCCSは携帯電話の基地局建設や保守、メガソーラー発電所建設などのエンジニアリング分野、京セラの製造分野も含めて、IoTの適用が可能な部門が身近にあり、比較的容易に現場への展開ができる。「IoTでは、センサやカメラなどさまざまなデバイスが利用されますが、今回私たちが注目した中の1つがスマートグラスです。グラスをかけて情報をやりとりできることが作業現場では非常に大きなメリットになると考え、『スマートグラス遠隔モニタリングシステム』の開発に着手しました」とKCCS ネットワークソリューション事業部 IoTサービスグループ グループ長 塩見 拓哉は語る。

2.作業者と管理者で映像と音声を共有、管理者の指示などをグラスに表示

インターネットビジネス事業部 プラットフォーム開発部 グループ長 小玉 佳

スマートグラス遠隔モニタリングシステムは、建設工事など作業現場での利用を想定している。具体的には、作業者がグラスをかけて見た映像と音声を遠隔地にいる管理者と共有、管理者は作業者に指示を行う。指示内容はグラス上部に表示され、作業者はそれを見て、指示通りに動くといった活用である。「グラスにはシースルービューアーやカメラ、加速度センサなどが搭載され、OSとしてAndroidが採用されています。Androidアプリケーション開発で培った我々のノウハウと、グラスの機能を利用して、作業者と管理者の間で双方向に通信できるモニタリングシステムを開発しました」とKCCS インターネットビジネス事業部 プラットフォーム開発部 グループ長 小玉 佳は語る。

スマートグラスとPCのやり取りはサーバを介して通信するのが一般的だが、今回はリアルタイム性確保のために、プラグインなしでブラウザ間の音声やビデオのチャット、ファイル共有などができるWebRTC(Web Real-Time Communication)を採用した。これによって、IDを入力すれば最初にサーバを介し、後はP2P(ピア・ツー・ピア)で接続することで、サーバ負荷の軽減と通信のリアルタイム性が向上する。機能面では、作業者と管理者の映像や音声の共有、管理者からのメッセージやデータ、ペイントで作業指示などを書き込んだ画像の送信、作業者による撮影画像の保存、動画の管理者側での保存などの機能が開発、提供されている。

■スマートグラス遠隔モニタリングシステムの利用イメージ

スマートグラス遠隔モニタリングシステムの利用イメージ

3.メガソーラーの運用・保守業務での確認作業でトライアル利用を開始

環境エネルギー事業部 設計・技術部 グループ長 赤坂 雄一郎

KCCSでは、メガソーラーの設計・調達・建設(EPC)と運用・保守(O&M)を行う環境エネルギー事業部で、本格導入に向けたシステムのトライアルを行った。EPC事業では最初にメガソーラーの建設候補地に行き、建設に適しているかどうかを調査し判断する。「候補地は遠隔地であることが多く、現地調査にかかる工数と費用もばかになりません。それを、遠隔モニタリングシステムを使えば1人だけ現地に派遣し、事務所から画面を見ながら判断することができます。また必要な情報があれば事務所からグラスを介してメッセージや画像などを送信し、現場とリアルタイムに共有できます。そしてこのような調査だけでなく、建設工事や検査でも使えるのではないかと考えています」とKCCS 環境エネルギー事業部 設計・技術部 グループ長 赤坂 雄一郎は語る。

またO&M事業では、現場作業での確認に利用しようと計画している。メガソーラーは高圧の電力を扱うため、ヒューマンエラーによる感電などの危険性があることから、作業者と責任者が一組になり確認しながら作業を行う。「実際にスマートグラスをかけて、現地での保守作業を行いました。今回は私が現地で作業をし、確認業務を事務所で行いましたが、モニタリングシステムを活用することで、1人でも問題なくスムーズに作業を終えることができ、人件費や交通費などのコスト削減だけでなく、業務の効率化にも役立つことを実感しました」(赤坂)。

4.多様なウェアラブルデバイスを活用しソリューションのラインナップを拡大

環境エネルギー事業部では、EPCとO&M以外にもスマートグラス遠隔モニタリングシステムを活用したいと考えている。メガソーラーはここ数年で成長してきた事業分野であるため技術者が限られ、資格を持っていても現場での経験が少ない人が多い。そこで、技術者が遠隔モニタリングシステムで録画した映像を見ながら、OJTで技術を学べるようにしていく計画だ。

そのほかにもKCCSでは、両手をフリーハンドにしておく必要があるビル屋上の携帯電話基地局建設業務など、ほかの事業部門や製造現場での活用も構想しており、本格的なサービス展開に向け着実に取り組んでいる。さらに、グラスタイプ以外の時計型や脈が計測可能なウェアラブルデバイスで、工事現場での作業員の熱中症などの体調管理を遠隔で行うなど、さまざまなウェアラブルデバイスを活用し、現場で働く人に焦点を当てたソリューションのラインナップを拡大していく考えだ。

取材時期:2015年3月
掲載日:2015年5月12日