特別企画
インタビュー

光ファイバの敷設が困難な中山間地域で、広帯域無線アクセスシステムとIP告知システムにより、ブロードバンドと防災・行政情報のインフラ整備を支援

京セラコミュニケーションシステム(KCCS)は光ファイバの敷設が難しい中山間地域を抱えた自治体向けに、広帯域無線アクセスシステムを提供している。この無線アクセスシステムは地震・台風・豪雨・津波などの災害に対する防災・行政情報伝達用としても活用が可能である。
広島県安芸高田市では、光ファイバと広域帯無線アクセスシステムを組み合わせて情報通信基盤を整備し、インターネット接続サービスや、IP告知システムにより防災・行政情報が提供され、市民の利便性向上や安心・安全の確保、地域の活性化を図っている。

INDEX

1.広帯域無線アクセスシステムでインターネットと防災情報のインフラを同時整備

総務省によると、全国におけるブロードバンドの世帯カバー率は100%を達成したとされている。しかし実際は市町村合併をした自治体に多くみられるように、市役所などがある中心部では大手通信事業者などにより光回線を利用したブロードバンドサービスが提供されていても、周辺の山間部や離島などでは光ファイバの敷設が難しく、高速通信の恩恵を受けることができない地域も多い。

エンジニアリング事業本部 ワイヤレスソリューション事業部 ワイヤレス事業推進部 部長 波岡 康博

こうした条件不利地域向けに、KCCSは「広帯域無線アクセスシステム」を提供している。「このシステムは光ファイバに準ずるスピードで提供できることが大きな特長です。5GHz帯、2.4GHz帯に対応しており、特に5GHz帯については包括登録が必要で誰でも利用できるわけではないため、電波干渉が少なく通信品質が保たれます」とKCCS エンジニアリング事業本部 ワイヤレスソリューション事業部 ワイヤレス事業推進部 部長 波岡 康博は語る。また無線方式だと電柱にケーブルを敷設する必要がないため、電力会社などに電柱添架料を支払う必要がなく、道路拡幅などによる支障移転も少ないことから、整備費用だけでなくランニングコストも安価になるという。

この広帯域無線アクセスシステムの活用分野はブロードバンド環境構築だけではない。60MHz帯を使う防災行政無線のデジタル化が進む中で、この無線ネットワークを使うことで災害に対する備えとしての防災情報基盤をブロードバンド基盤と同時に整備でき、予算を抑えた形でインフラ構築できるのだ。

 

2.光ファイバと広帯域無線アクセスシステムのハイブリッドで整備した安芸高田市

中国ブロードバンドサービス株式会社 営業グループ 責任者 中根 慎二

光ファイバと広帯域無線アクセスシステムのハイブリッドによりブロードバンド環境を整備し、防災・行政情報の配信や地域コミュニケーションの活性化などを目的にIP告知システムを導入しているのが広島県安芸高田市だ。広島県北部に位置し、2004年6町の合併で誕生した安芸高田市は光ファイバが未整備だったことから、他の自治体にない取り組みとして光ファイバと無線システムを組み合わせたハイブリッドネットワークの整備を決めた。「自治体からすると情報通信基盤整備にとどまらず、整備後のネットワークをどう運営・活用できるかがポイントになります。そこでKCCSは中国ブロードバンドサービス株式会社(CBBS)を立ち上げ、ネットワークの管理運営を担うことになりました」とCBBS 営業グループ 責任者 中根 慎二は説明する。 

エンジニアリング営業本部 ワイヤレスソリューション営業統括部 ワイヤレス営業部 部長 菅佐原 幸夫

CBBSは住宅集中地域には光ファイバ、中山間地域には広帯域無線システムで、インターネット接続サービスとIP告知システムを提供している。インターネット接続サービスはCBBSがプロバイダとして提供し、IP告知システムは安芸高田市の行政サービスとしてCBBSが市の委託を受けて運営している。IP告知システムは合併前の旧4町で行われていた農協放送の代替にもなるもので、緊急時の防災情報も放送する。「合併した6町の内4町が2013年4月から、残りの2町が10月からサービスを開始しました。高齢化率約30%という安芸高田市で全世帯の約75%がIP告知システムに加入しており、高齢の家庭になればなるほど加入率が高くなっています」とKCCS エンジニアリング営業本部 ワイヤレスソリューション営業統括部 ワイヤレス営業部 部長 菅佐原 幸夫は語る。

 

3.高い加入率のIP告知システムで、住民・行政に密着した情報を提供

IP告知システム/テレビ電話使用イメージ

IP告知システムは受話器付きタブレット型端末で、テレビ電話機能により市内は無料で通話できるようになっている。よく利用されているコンテンツは「おくやみ案内」で、市内の亡くなられた方のお通夜や告別式の日時などを全加入者に放送する。「IP告知システムは住民の方の利用率が非常に高くとても喜ばれています。中でも評判が良いのは迷い犬の捜索で、画像を添付できることから早期発見につながっています。また豪雨などで道路の通行止めが発生した時には、地図を添付して表示できるため分かりやすいと好評です。サービスが始まってあまり時間が経っていないのですが、すでに住民の生活の一部になり始めています」と中根は話す。また防災・行政情報は市役所からファックスでCBBSが受け、それをテキスト化して音声に変換し一斉に放送しているという。

IP告知システムの加入率が高い背景には地域に密着したCBBSの活動がある。市役所の職員の方が端末を持って住民説明をするのと同様に、CBBSの社員は住民を訪問して端末を見せながら今まで100回近くの説明を行ってきた。「地域に密着して運営しているため、クレームも含めて問い合わせには丁寧な対応を心がけています。そして電話で対応しきれない場合は、すぐにそのお宅に駆けつけるようにしています」(中根)。現在、安芸高田市ではIP告知システムについて、Jアラート(全国瞬時警報システム)や消防無線との連携を進めており、今後買い物代行など高齢化に対応したさまざまなサービスの導入を計画している。


■安芸高田市における提供サービスイメージ

安芸高田市における提供サービスイメージ 

 

安芸高田市でのネットワーク整備と運用経験をもとに、KCCSでは今後、光ファイバの敷設が難しい中山間地域を抱えた自治体に向けて、広帯域無線アクセスシステムによる超高速ブロードバンドの構築や、IP告知システムと組み合わせた防災・行政情報ソリューションなどを提供していく考えだ。

 

取材時期:2013年10月
掲載日:2013年11月12日