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身近なインターネット端末として急速に普及が進むスマートフォンの登場により、ECやモバイルサービスなどの利用が拡大している。これに伴い、効果的なマーケティング方法として行動ターゲティングへの期待が一層高まっている。また、インターネット利用者の趣味・嗜好を分析し、最適な情報を提供する行動ターゲティング応用サービスは、ECサイト事業者や広告事業者、広告主の企業などに注目されている。こうした中、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)は、行動ターゲティング応用サービス事業、ネット広告配信関連事業を共同展開するためサイジニア株式会社(サイジニア)と業務提携した。そして2012年1月、その第一弾として、サイジニアのレコメンデーションサービス
「デクワス」をSaaS型で提供開始する。今後の事業展開や可能性について、サイジニア代表取締役の吉井 伸一郎氏と、KCCSのICT事業統括本部 事業開発
本部長 吉田 洋に聞いた(文中敬称略)。
ICT事業統括本部
事業開発本部長
吉田 洋
−KCCSとサイジニアの両社が行動ターゲティング応用サービス事業、ネット広告配信関連事業の共同展開に向けて業務提携していますが、その狙いを聞かせてください。
吉田 KCCSではこれまでインターネットやモバイルサービス向けのプラットフォームの開発・提供などを通じて、ECサイト事業者やコンテンツ配信事業者などのさまざまなビジネスをサポートしてきました。ところが、インターネット市場が大きく変化する中、その変化に応じた新たなプラットフォームが求められるようになっています。
近年、インターネット上の情報が爆発的に増え、利用者にとって本当に役立つ情報を見付けにくくなっています。また、ECサイト事業者やネット広告を提供する企業にとっては、伝えたい情報を利用者に的確かつタイムリーに提供することが難しくなっているのが実情です。
こうした状況の中、KCCSでは行動ターゲティング応用サービス事業を立ち上げ、新たなビジネスプラットフォームを提供していきます。その基盤にサイジニアが開発したレコメンデーションエンジン「デクワス」を利用します。個々の利用者にパーソナライズされた情報を提供する同社の技術は、行動ターゲティング応用サービス事業に欠かせないと判断し、業務提携に至った経緯があります。
吉井 サイジニアとしては、KCCSとの業務提携により、技術と事業の両面で行動ターゲティング応用サービスの展開を加速できると期待しています。
KCCSはモバイルのコンテンツ配信プラットフォームなどに関する豊富なノウハウがあり、デクワスの特長を活かしたサービスを展開できると考えています。
サイジニア株式会社
代表取締役
吉井 伸一郎氏
−デクワスの特長を簡単に説明してもらえますか。
吉井 例えば、一般的な検索エンジンの場合、利用者自身がキーワードをテキストボックスに入力して情報にたどりつきます。つまり、利用者がすでに知っているモノしか探すことができず、自分の知らない情報との出会いは期待できません。
また、従来のレコメンデーションエンジンは、利用者の行動や閲覧履歴に基づき、統計的に多い組み合わせのモノを表示する方式が一般的です。多くの人に何度も購入・閲覧されるモノほど高く評価され、人気の高いモノに偏って表示される傾向があります。そのため、利用者がすでに知っていたり、簡単に探せたりするモノも少なくありません。しかし、これでは利用者にとってインパクトが少なく、満足度や購買意欲の向上に繋がるとは言えません。
それに対し、当社のデクワスは複雑ネットワーク理論をベースに利用者の好みに合ったお勧めのモノを表示できることが特長です。
つまり、利用者は人気の高いモノだけでなく、それまで知らなかったり、従来のレコメンデーションエンジンでは探せなかったロングテールのモノにも「出くわす」体験ができます。
そして、デクワスはキーワード検索のように言語に依存しないことから、日本語のほか、英語や中国語など海外のレコメンデーションにも対応します。共通の趣味・嗜好を持つ仲間を抽出してレコメンドするデクワスにより、利用者は「より豊かな生活を送ることができる」のです。
吉田 私たちも、「より豊かな生活を送れる」という吉井さんの考えに共感し、共同で事業を展開しています。加えて、インターネット技術の多くは海外で開発されていますが、デクワスは日本発の世界に通用するユニークな技術です。
KCCSが今後、グローバルなビジネスを展開していく上でも、デクワスをベースに世界へ付加価値の高い行動ターゲティングのプラットフォームを提供できると考えています。
−行動ターゲティング応用サービスの市場動向や可能性についてどう見ていますか。
吉井 EC市場、モバイルサービスなどの拡大とともにレコメンデーションサービスは堅調に成長すると見込まれています。また、ネット広告市場はすでにラジオ広告や新聞広告を上回るほど拡大し、大きな転換期を迎えています。複数メディアの広告枠を束ねてネット広告を配信できるアドネットワークや、広告枠を取引するアドエクスチェンジが広がり、広告枠ごとにリアルタイムに入札できるRTB(Real Time Bidding)も可能になっています。
このような中、これまでのディスプレイ広告はどこに表示するかといった「場所」を重視してきました。これからは何に興味を持った利用者(オーディエンス)が閲覧しているか、「人」によって広告枠の価値が決まるようになるのです。例えば、女性向けファッションの広告を出稿する場合、デクワスのエンジンを用いて利用者の趣味・嗜好を分析し、的確なターゲットに最適な広告を配信できます。当社では、こうしたオーディエンスターゲティング広告サービスを開発しており、広告主は効果的な媒体に広告を配信することで高いROI(投資収益率)が期待できるようになります。
−KCCSではどのようにどう取り組んでいくのですか。
吉田 まず、ECサイト事業者やコンテンツ事業者などのお客様に向けたデクワスのエンジンを使ったレコメンデーションサービスの提供を皮切りに、蓄積した情報を基に広告事業者、広告主向けのオーディエンスターゲティング広告サービスを順次、提供していきます。そして、RTBなどを組み合わせた広告配信プラットフォームとなるDSP(Demand Side Platform)サービスの展開を視野に入れているところです。
こうした行動ターゲティング応用サービスを展開する上で、モバイル技術やセキュリティ、安定したサービスを提供するためのシステム運用など、さまざまな要件が求められます。KCCSでは長年にわたってモバイルインターネットに関する技術とノウハウを蓄積しています。また、膨大なデータを扱うデータセンター事業を通じ、大量のトラフィックを処理する技術、運用ノウハウがあり、信頼性の高いサービスを提供できます。
吉井 共同で提供していく行動ターゲティング応用サービスでは、利用者ごとにパーソナライズされた情報を表示することにより、クリック率の向上が期待でき商品購入機会の増加に貢献します。また、利用者は、従来見つからなかった情報を入手することができます。新たな情報との出会い、発見をお手伝いする意味で、デクワスはディスカバリーエンジンとも呼ばれています。これにより、情報を探す手間が省け、その分、時間を有意義に使うことができます。
吉田 この仕組みは事業者と利用者の双方にとってメリットがあり、この事業には大きな意義があると考えています。ECサイト事業者や広告事業者、広告主などにとどまらず、広範な事業者とのパートナーシップを通じ、より快適な情報提供環境の構築を目指していきます。