• ERP・経営管理

株式会社ピーエムティー組立製造業向けグローバルERP「Infor SyteLine」

ERPを活用してものづくりを革新
事業の拡大を見据えた経営基盤が完成へ

(右から)ピーエムティー テクノロジーイノベーション事業部 技術製造部 生産管理グループ グループリーダー 德渕 裕美氏 / 同 ビジネスイノベーション事業部 リレーションマネジメントグループ グループリーダー 大神 臣氏 / 同 管理部 情報システムグループ グループリーダー 森 康崇氏 / 同 執行役員 ビジネスアドミニストレーション本部 本部長 八木 誠氏 / KCCS ICT事業本部 ソリューション事業部 ERPソリューション部 東日本ソリューション課 藤本 祐也 / 同 ICT事業本部 ソリューション営業統括部 ビジネスソリューション営業部 西日本BS営業課 岡本 祐介

半導体製造向けの部品加工および装置の設計・製作を手がけ、近年は環境事業や医療、食品などの新分野に相次いで参入している株式会社ピーエムティー(ピーエムティー)。事業の拡大が続く同社の経営を支えているのが、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)が構築したERPシステム(統合基幹業務システム)だ。ERPパッケージにはインフォア社の「Infor SyteLine」を採用。Infor SyteLineが備える柔軟性や、基幹システム構築におけるKCCSの実績や技術力などが選定の決め手になった。

1. 背景・課題 事業の拡大に伴って既存の生産管理体制が限界に

同社は、半導体製造向けの商社として1991年に創業。1998年に「マイクロサーボプレスシステム」の第1号機を完成させたのを機に、軸制御技術をコアコンピタンスとしてさまざまな領域に事業を広げ、業績を伸ばしてきた。2008年には、中小企業庁の「元気なモノ作り中小企業300社」にも選出されている。

同社のものづくりを支えていたのが、商社時代に構築した販売管理パッケージをカスタマイズしたシステムだ。このシステムの主要な機能は受発注と売り上げを管理することで、生産計画・在庫管理などの生産管理系の機能は備えていない。現場の社員が「Microsoft Excel」を駆使し、この販売管理システムで生産管理も行っていた。生産管理に不足している機能を社員の手作業でカバーしてきたのだ。

しかし事業が拡大するのに伴って、この運用体制が限界に近づいてきていた。実際に販売管理システムを利用していたピーエムティー ビジネスイノベーション事業部 リレーションマネジメントグループ グループリーダーの大神 臣氏は、「部品数が多い大型装置の開発案件が徐々に増えてきたことで、データベースへの登録制限やシステム拡張が難しいなどの問題があり、業務上の支障が出るようになってきました」と、ERP導入前の状況を振り返る。販売管理システムには製番・品番管理という概念がなかったため、個別原価や不良コストを把握できない、あるいは在庫の正しい数量が把握できないといった問題もあった。

株式会社ピーエムティー ビジネスイノベーション事業部 リレーションマネジメントグループ グループリーダー 大神 臣氏

こうした状況を改善するきっかけとなったのが、プロジェクトマネジメントを学ぶ社内研修だった。この研修には、チームごとに自社の課題を分析して改善策を提案するというプログラムが含まれていた。あるチームが生産管理の問題と改善策を提案。これが後に全社的に承認され、ERPシステムを導入するプロジェクトにつながったのだ。社内研修時のチームがそのまま、このプロジェクトのメンバーとなった。執行役員でビジネスアドミニストレーション本部の本部長を務めるピーエムティー 八木 誠氏は、ERPの導入を決断した状況を次のように語る。「相次いで新しい事業領域に参入している当社にとって、経営陣も経営基盤の強化が喫緊の課題だと考えていました。ですので、ERPを導入するという決断が即座に下されました」。

こうして、2015年5月に導入プロジェクトがスタートを切った。

株式会社ピーエムティー 執行役員 ビジネスアドミニストレーション本部 本部長 八木 誠氏

2. 選定ポイント カスタマイズの容易さが大きな決め手に

システムの選定にあたって、生産管理機能を備えたERPパッケージを提供するベンダ10社にデモを行ってもらった。その後、Infor SyteLineを含む4製品に絞って詳細を比較した。その中からInfor SyteLineを選定したことには大きく二つの理由がある。

一つ目はInfor SyteLineの柔軟性だ。Infor SyteLineは「Microsoft .Net Framework」や「Microsoft SQL Server」などWindows環境における標準的な技術やソフトウェアがベースとなっており、ソースも公開されているため、自社で容易にカスタマイズが行える。

さらに専用の開発ツールが用意されており、ノンプログラミングで画面や項目などをカスタマイズできる。このツールで作成した機能は、Infor SyteLine本体をバージョンアップしても引き継がれるため、カスタマイズを気にすることなく常に最新のシステムを利用することが可能だ。導入プロジェクトのリーダーを務めた、ピーエムティー 管理部 情報システムグループ グループリーダーの森 康崇氏は「現場からの要望に対して即時に対応できるようになる点は、システムを提供する私たちにとって非常に大きなメリットだと考えています。特に新しい事業に参入した際には、これまでとは違った要望が増えるので、カスタマイズが容易なことは我が社にとって重要な要件です。個人的には、プロジェクトの当初からInfor SyteLineを導入したいと思っていました」と評する。

株式会社ピーエムティー 管理部 情報システムグループ グループリーダー 森 康崇氏

日頃から使い慣れたOfficeアプリケーション製品と同様の操作性を実現している点も選定の決め手の一つになった。例えば一覧表示されたデータを選択し、そのままExcelシートに貼りつけたり、逆にExcelからInfor SyteLineに貼りつけたりするようなことが可能だ。このほか、全世界で約6,000社に導入されているという実績も選定を後押ししたという。
もう一つの選定理由は、KCCSに対する信頼感だ。KCCSは、京セラをはじめとする多くの製造業のシステム構築・運用に長年携わっており、ピーエムティーはその実績や製造業における業務の知見の深さを評価していた。さらに、当初から業務プロセスの改善など、後々、手戻りの少ない作業手順で進められるよう、導入先の立場に立った提案をしていたことも評価された。

実際、導入プロジェクトではきめの細かい支援を受けたという。例えば、KCCSで同社を担当したICT事業本部 ソリューション事業部 ERPソリューション部 東日本ソリューション課の藤本 祐也は6か月もの間、週に2~3日は同社を訪れ、新システムのコンセプトや新しい仕事の進め方などを説明・議論している。現場でシステムを利用しているピーエムティー テクノロジーイノベーション事業部 技術製造部 生産管理グループ グループリーダーの德渕 裕美氏は、次のように語る。
「これまでは製番・品番管理という概念がなかったので、最初は新システムでの仕事の進め方が理解できませんでした。初めてシステム化する部分や、既存業務から運用方法を変える際の仕様の取り決めに一番苦慮しましたが、藤本さんが懇切丁寧にサポートしてくれて大変助かりました」。

株式会社ピーエムティー テクノロジーイノベーション事業部  技術製造部 生産管理グループ グループリーダー 德渕 裕美氏

藤本は「製番・品番管理を導入すれば、さまざまな面で大きな成果が出ると確信していました。ERPの導入においては、パッケージが持つ機能とユーザ企業の業務の『適合部分(フィット)』『かい離部分(ギャップ)』を分析する『フィット&ギャップ』の作業が非常に重要になります。ピーエムティー様にはプロジェクトの早い段階からInfor SyteLineに触れていただき、業務によってはパッケージに合わせて運用の変更を検討いただきました」と語る。

藤本と同様に同社を担当したKCCS ICT事業本部 ソリューション営業統括部 ビジネスソリューション営業部 西日本BS営業課の岡本 祐介は「現場の社員の方々の勉強熱心さに驚きました。これなら、すぐにシステムの導入効果が表れると思いました」と評する。

ICT事業本部 ソリューション事業部 ERPソリューション部 東日本ソリューション課 藤本 祐也

3. 導入効果・展望 ものづくりに関わる意思決定の精度とスピードが向上

新システムは2016年8月から稼働を開始した。これによって、同社の生産管理は大きく生まれ変わった。ものづくりの現場の詳細な状況が可視化できるようになったため、意思決定の精度とスピードが大きく向上したのだ。

例えば、従来は正確な在庫量が把握できなかったが、新システム稼働後はほぼリアルタイムで知ることができる。原価計算の精度も上がり、ロスコスト管理によって不要な経費も見えるようになった。

決算の早期化も実現できた。これまでは仕掛かり中の在庫などを正確に把握するのに手間がかかり、資産の算出に時間を要していたのだ。財務諸表を完成させるまでに、従来は期末から1か月を要していたが新システム導入後は2週間で済むようになった。この分、経営陣が早く意思決定を下せるのだ。執行役員の八木氏は「将来の事業拡大へ向けた経営基盤がようやく完成しました」と評する。

現場の社員の利便性も上がっている。データ入力の生産性が飛躍的に高まったのだ。同社では部品数の多い装置を一日に20~30件受注することもある。以前は大変多くの伝票処理(受注~購買まで)を1件ずつ手で入力していたため、3人で作業しても入力が追い付かない状況だった。しかし、新システム導入後はExcelからの取り込みを利用することで一括して登録ができるようになり、日中の作業で終わらなかったような仕事が約30分に短縮された。德渕氏は「品目マスタに構成部品や工程を事前に登録できるので、特にリピート品の取り扱いは格段に処理が早くなりました」と付言する。

ICT事業本部 ソリューション営業統括部 ビジネスソリューション営業部 西日本BS営業課 岡本 祐介

同社では、システムを拡張することによって、さらに生産性を上げることを検討している。現在は、バーコードやハンディーターミナルなどを導入することを計画中だ。Infor SyteLineは、容易にカスタマイズできるので、こうした拡張でも外部のベンダに頼らずに済む。

将来的には、グループ内での連携を深めるため海外を含めた関連会社への展開も視野に入れている。グループでシステムを統一することが大きな目標だ。

取材時期:2017年11月
掲載日:2018年1月25日

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