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ナカシマプロペラ株式会社組立製造業向けグローバルERP「Infor SyteLine」

海外拠点を含めたグループ企業横断で全体最適化 新たに導入したERPが競争優位性の源泉に

(左から)KCCS ビジネスソリューション営業部 西日本BS営業課 洪 錫柱 / 同 ERPソリューション事業部 東京ERPソリューション課 課長 田井中 学 / ナカシマプロペラ 経営企画室 次長 吉崎 孝一氏 / 同 室長 中島 崇喜氏 / KCCS ERPソリューション事業部 東京ERPソリューション課 臼井 尚大 / 同 ソリューション事業本部 副本部長 兼 ERPソリューション事業部 事業部長 谷口 直樹

船舶用プロペラで世界トップシェアを誇るナカシマプロペラ株式会社(ナカシマプロペラ)が、グループ企業を横断した全体最適化を狙ってERPシステム(統合基幹業務システム)を導入。2016年2月にシンガポールの販売拠点、フィリピンとベトナムの工場を含めた4か国7拠点で新システムが一斉に稼働を開始した。このシステムを構築したのが、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)だ。ERPパッケージにはインフォア社の「Infor SyteLine」を採用。基幹システム構築におけるKCCSの実績や技術力、Infor SyteLineが備える柔軟性などが選定の決め手になった。

1.2系列の業務プロセスが全体最適化の阻害要因に

ナカシマプロペラ

ナカシマプロペラがERPの導入を検討した背景には、漁船やプレジャーボート用の中小形プロペラの分野で世界的なブランド力を持つミカドグループが2009年にグループに加わったことがある。これを機に、中小形プロペラ事業の再編に着手するが、ミカドグループの拠点(国内拠点とフィリピン拠点)は、受注・設計・製造といった業務の流れがナカシマプロペラとはまったく異なっていた。

船舶用プロペラのものづくりは、機械や電機メーカーの業務プロセスとは大きく異なる。製品の注文を受けた後に、設計を開始するという段取りになる。顧客企業の船舶ごとに、異なる仕様のプロペラを製造しているのだ。

ナカシマプロペラ 経営企画室 室長の中島 崇喜氏は、「あらゆる船舶に対して、求められる仕様や条件によって最適なプロペラを提供しています。推進効率が変わると、燃料費にも大きく影響を与えることになります」と語る。顧客ごとに仕様が異なる製品を生産するため、一般的なERPパッケージが製造業向けに提供しているMRP(生産資源計画)機能は利用できない。また、1つの製品の設計・生産に付随する技術情報が膨大な数になるという特徴もある。ERPを含めて、市販パッケージの標準機能だけでは業務プロセスをカバーできないのだ。

ナカシマプロペラ 中島氏

新システムを導入する以前は、それぞれの拠点が個別に業務を最適化しており、独自開発のシステムや表計算ソフトを利用して受発注業務の効率化に努めていた。同じ業務なのにグループ内に2系列の業務プロセスが存在し、さらに拠点ごとに異なる仕組みで処理していたのである。こうした状況ではグループ間で柔軟に生産振り分けができず、海外工場の生産状況をリアルタイムに把握することは難しいという状況だった。

そこで、経営企画室を中心として業務プロセスを統合することを検討。この結果、グローバルな拠点を対象にERPシステムを導入し、グループ横断で全体最適化を目指すことを決断した。

2.海外でのサポート体制やパッケージの機能を評価してKCCSを選定

ERPシステムの導入に当たって、2013年に3社のSIer(システム構築業者)に提案を打診した。実は、この段階でKCCSは候補に入っていなかった。ある知人の紹介で、KCCS ビジネスソリューション営業部 西日本BS営業課の洪 錫柱が、ナカシマプロペラ 経営企画室 次長の吉崎 孝一氏のもとへ説明に訪れる機会を得た。

この時、既に他のSIerに打診していたこともあり、吉崎氏は候補としては考えていなかった。同氏は、当時のことを「話を聞くだけ聞いて、お引き取り願おうと思っていました」と振り返る。

しかし、話を聞くうちに、洪が提案するInfor SyteLineが自社の業務に向いていると考えるようになった。

ナカシマプロペラ 吉崎様

Infor SyteLineは、製造業の専門家が30年以上にわたる経験を凝縮して開発したソリューション。グローバルで約6,000社の導入実績を誇っている。製造業が必要とする一連の機能を網羅していることに加え、カスタマイズが容易な柔軟性や、多通貨・多言語対応、複数のグループ企業を単一のシステムで管理できるマルチカンパニー対応などの機能が吉崎氏の目を引いた。とりわけ、自社の業務に合わせてカスタマイズしても利用企業でメンテナンスができるため、ブラックボックスにならないという点を吉崎氏は評価した。

そこで、KCCSにもシステム提案を正式に依頼。他社に後れをとりながらも、選定候補に滑り込んだ。

KCCS 洪

ナカシマプロペラでは、開発体制やサポート体制、提案するパッケージの機能などを総合的に判断して、4社のSIerの中から最終的にKCCSを選定。海外でのサポート体制も、KCCSを高く評価したポイントだったという。

シンガポール、フィリピン、ベトナムに拠点を持つナカシマプロペラにとって、海外でのサポート体制は重要な要件だった。同社の基幹業務を支えるシステムであるため、停止することは許されない。そのため、万が一トラブルが発生した際に、例え海外拠点であっても迅速に対応できる体制が必要だった。吉崎氏は、「KCCSは、グローバルにビジネスを展開する京セラのシステム構築・運用に長年携わってきていますから、海外でのサポートに不安はありませんでした」と語る。Infor SyteLineの導入に際しては、KCCSのシンガポールのグループ会社KYOCERA Communication Systems Singapore Pte. Ltd.(KCSG)からも支援を行っている。

ナカシマプロペラでは、2014年2月にKCCSに正式発注するとともに、システム構築プロジェクトを組成。経営企画室の室長である中島氏をトップ、吉崎氏をプロジェクトリーダーとして約10人のメンバーでシステム構築に取り組んだ。業務設計、カスタマイズ部分のアドオンを含めた詳細設計・開発・テストを経て、2016年2月に海外を含めた7拠点同時に本格稼働を開始した。運用面で小さなトラブルはあったもののシステム面では問題はなく、各拠点とも生産機能を止めることなく稼働を継続している。

中島氏は開発工程を振り返って、「KCCSは単にSIerと発注者という関係ではなく、共通の目的を掲げたパートナーというべき存在でした」と語る。今回のような大規模なシステムでは、小規模なトラブルの発生は避けられない。そのような場合、ボトルネックとなっている業務に社員をアサインすることも必要だが、通常はSIerの裁量の範囲外。しかし、この案件に携わったKCCSの社員は業務内容にも深く入り込んでいるため、そのようなことにも精通。KCCSの社員の判断に委ねたケースも多かったという。

「組織や体制の問題など技術以外のことを助言してくれるITベンダはなかなかいません」。吉崎氏はKCCSを、このように評する。要件定義の途中で、ある拠点での業務設計が決まらずに、プロジェクトに遅れが発生しそうになった際には、KCCS ERPソリューション事業部 東京ERPソリューション課 課長の田井中 学が1か月間、その拠点に常駐し、社員との折衝を行っている。

今回のプロジェクトの成功要因を、中島氏は「パッケージが私たちに適していたということもあるのですが、最終的には"ヒト"です」と語る。

KCCS 田井中

3.新たに導入したERPシステムを経営基盤の中核と位置づける

本格稼働から約半年を経た現在、新システムはプロジェクトを率いた中島氏や吉崎氏の思惑通りの成果を上げている。

すべての拠点がERPシステムを活用して業務を進めているため、業務プロセスの統合を実現。本社からERPシステムの情報を見るだけで、グローバルな受発注状況や生産の進捗状況などをリアルタイムで把握できるようになった。さらなる納期短縮も可能になったという。

中島氏は、「新システムの導入によって、グループ横断の全体最適化の緒に就きました。ERPシステムを、グローバルな競争を勝ち抜くための経営基盤だと位置づけています。今後も、この経営基盤を中核にITを活用して競争力を高めていきたい」と語る。

KCCS ソリューション事業本部 副本部長 兼 ERPソリューション事業部 事業部長の谷口 直樹は「経営基盤を構築したベンダとして、今後もナカシマプロペラ様が経営戦略を具現化できるように、全力で支援していきます」と抱負を語る。

KCCS 谷口

導入イメージ

取材時期:2016年7月
掲載日:2016年8月30日

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