環境循環都市を目指す京丹後市がEV車向け充電ステーションを整備

(右から)京丹後市 中山 泰市長 / エンジニアリング営業本部 開発営業統括部 事業部長 服部 達幸

京都府・京丹後市は、「市民総幸福のまちづくり推進条例」の制定や再生可能エネルギーを活用した環境循環都市の推進など先進的な取り組みで知られている。同市では政府が進める地方創生に向けた地域再生計画の一環として、市内にEV(電気自動車)タクシーの導入と充電ステーションの整備を進めている。その充電ステーションに太陽光発電や蓄電池、災害対策BOXを備えた京セラコミュニケーションシステム(KCCS)のEV車向け充電システムが採用され、市内の道の駅や温泉施設で稼働を開始している。京丹後市の中山 泰市長と農林水産環境部の担当者に取り組みを聞いた。

「人と自然の元気力」を掲げ、グリーン経済を推進

日本海を望む京都北端部の丹後半島に位置する京丹後市。「人と自然の元気力」を掲げ、再生可能エネルギーの導入を積極的に推進している。

京都府京丹後市の風景

「環境にやさしい再生可能エネルギーを地産し、地域の伝統産業などで活用することで製品の付加価値を高め、温室効果ガスの削減と地域経済の循環を図る環境循環都市づくりを進めています」と京丹後市の中山 泰市長は循環型グリーン経済社会形成の取り組みについて話す。

例えば、京丹後市エコエネルギーセンターでは食品工場などから排出される生ゴミを原料にしたバイオガス発電事業を実施。発電した電力の売電に加え、バイオガスを取り出す際に発生したメタン発酵消化液を肥料として農業に利用し、収穫した農作物を「環のちから」ブランドとして販売している。

京丹後市
中山 泰市長

また地方創生の一環として地域再生計画に取り組んでおり、公共交通空白地でのEVタクシーの運行と充電ステーションの導入を行っている。クリーンエネルギーを利用した公共交通システムの構築と、これらの仕組みを使った観光地の移動など、観光の活性化と環境調和社会の創造に貢献する狙いがある。

京丹後市 農林水産環境部 環境バイオマス推進課 課長の上田 雅彦氏は「地域再生計画の立案段階からEVタクシーの導入を検討してきました。また、国では充電設備を補助する次世代自動車インフラ整備促進事業を進めており、EVタクシーの導入とともに充電ステーションの整備に取り組んでいます」と述べる。

京丹後市
農林水産環境部
環境バイオマス推進課
課長 上田 雅彦氏

災害対策BOXを備えた充電ステーションを配置

京丹後市では充電ステーションの整備にあたり、再生可能エネルギーの利用と効率的な活用に向けた提案や災害対策などを要件に、事業者を募った。KCCSでは充電器・蓄電システムのメーカーや施工会社とジョイントし企画提案。市の審査委員会での審査を経て提案が採用された。

要件に示された『再生可能エネルギーの利用』に関しては、施設(カーポート)の屋根にソーラーパネルを設置、太陽光発電システムと蓄電システムにより効率的な電力供給を行う。『災害対策』に関しては、電源(USBポート付きOAタップ)やラジオ、懐中電灯、軍手を収納した災害対策BOXを設置。災害発生時には蓄電池から電力を供給し携帯電話やスマートフォンを充電できるようにした。

充電ステーション概要図

充電ステーション概念図、発電、太陽電池モジュール、LED照明、蓄電システムパワーコンディショナ、深夜電力で蓄電、充電スタンド、昼間の電力を補助、商用電気、単相200V、三相200V、電力会社、非常時、災害対策BOX、USBポート付きOAタップや軍手、懐中電灯、ラジオなど格納
充電スタンド
災害対策BOX

KCCS エンジニアリング営業本部 開発営業統括部 事業部長の服部 達幸は「京セラとKCCSが共同開発したEV車向け充電システムを提案しました。これは太陽光発電システムで発電した電力で電気自動車やPHVの充電を行う環境配慮型の充電ステーションで、京丹後市様の再生可能エネルギーの利用という要件に合致していました。また東日本大震災では多くの被災者が携帯電話のバッテリーがなくなり、連絡が取れずに困っている光景を目の当たりにしたことから、災害時の非常用電源として携帯電話やスマートフォンを充電できる災害対策BOXの設置を提案しました」と説明する。

日本海に面する京丹後市は冬に雪が積もるが、「ソーラーパネルを設置する充電ステーションの屋根はあえて傾斜をつけず、落雪から利用者を守るように設計しています。これまで、当社が太陽光発電システムの設計・施工で培ってきた経験やノウハウを活かしています」と服部は付言する。

KCCS エンジニアリング営業本部
開発営業統括部
事業部長 服部 達幸

KCCSが企画・設計した充電ステーションは京丹後市内の「道の駅 くみはまSANKAIKAN」、「道の駅 てんきてんき丹後」、「宇川温泉 よし野の里」、3ヵ所に設置された。京丹後市 農林水産環境部 環境バイオマス推進課 環境総合係長の宇野 浩嗣氏は「市では道の駅や温泉施設などの観光拠点施設を災害時の避難場所として有効に活用できないか検討しています。そのため、KCCSの非常時の電力供給や災害対策BOXを含めた充電ステーションの提案を評価しました。また多くの観光客が訪れる道の駅に設置することで、PR効果も期待できると考えました」と話す。

京丹後市
農林水産環境部
環境バイオマス推進課
環境総合係長
宇野 浩嗣氏

充電ステーションのインフラ整備で街の活力を生み出す

充電ステーションはEVタクシーのほか、住民や観光客のEV車の充電に利用されている。

「充電ステーションには急速充電器と普通充電器を設置していますが、急速充電器でも充電には一定時間を要します。充電中に道の駅やよし野の里の売店で買物や食事を楽しんでいただくことで、観光と地域経済の活性化も期待できます」と上田課長は期待する。

今回の事業は、EVタクシーの普及推進のための充電施設の整備や、太陽光発電による充電ステーションのスマート化などが主な目的だが、「インフラを整備することにより、市民が環境にやさしいEV車を安心して購入でき、観光客がEV車で訪れても安心して市内を移動いただけます。充電ステーションは街の活力を生み出す起点になると期待しています」と中山市長は話す。

京丹後市の地域再生計画では、「ヒト」「モノ」の流れをつかむ観光振興も掲げており、道の駅を観光拠点とした滞在型周遊観光の促進や訪日外国人旅行者の取り込みに積極的に取り組んでいる。「観光客が滞在し、市内を周遊してもらうためには、電動レンタサイクルなどの導入も検討材料になります。今後も市に役立つ情報提供や提案をKCCSにお願いしたいですね」と宇野係長は述べる。

KCCSは今後も充電ステーションの提供にとどまらず、再生可能エネルギーを活用して次世代の環境循環都市づくりを推進する京丹後市のニーズに応える提案を続けていく考えだ。

施設の概要

①道の駅 てんきてんき丹後
②道の駅 くみはまSANKAIKAN
③宇川温泉 よし野の里

①道の駅 てんきてんき丹後

供用開始日 平成28年2月1日
設置台数
  • 急速充電器1台
  • 普通充電器1台

②道の駅 くみはまSANKAIKAN

供用開始日 平成27年12月1日
設置台数
  • 急速充電器1台
  • 普通充電器1台
付属装備品
  • 太陽光発電(3.2kW)
  • 蓄電池(7.2kWh)
  • 災害対策BOX

③宇川温泉 よし野の里

供用開始日 平成27年12月1日
設置台数
  • 急速充電器1台
  • 普通充電器1台
付属装備品
  • 太陽光発電(3.2kW)
  • 蓄電池(7.2kWh)
  • 災害対策BOX
  • 充電器はネットワーク認証で運用されています。

取材時期:2016年1月
掲載日:2016年2月25日

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