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伸和コントロールズ株式会社大規模製造業向けグローバルERP「Infor LN」

ERPパッケージ「Infor LN」導入の成功事例 計画どおりのコストとスケジュールでプロジェクトを完遂し、経営管理の強化に踏み出す

ERPパッケージ「Infor10 ERP Enterprise」導入の成功事例 計画どおりのコストとスケジュールでプロジェクトを完遂し、経営管理の強化に踏み出す

歯科治療イス用の電磁弁や半導体製造装置用の精密空調装置などで高いシェアを持つのが伸和コントロールズ株式会社(以下、伸和コントロールズ)だ。同社はKCCSをパートナーに生産・販売管理システムを刷新し、ERPソリューションを導入した。計画どおりのコストとスケジュールでプロジェクトを完遂し、原価管理や業務効率化の面で具体的な効果も見え始めている。導入に携わったご担当者に、ERP導入の狙いやプロジェクトを成功に導くポイント、導入効果などについて伺った。

1.電磁弁・電動バルブや精密空調装置を製造

歯科治療用や理髪店のイスは昇降や傾けた時に人にショックを与えることなく、ゆっくりと動くことが求められる。また人工透析装置に内蔵されている弁は小型軽量で耐薬品性の高い流体制御が求められる。こうした装置に使われている電磁弁で、50~70%という高いシェアを誇っているのが伸和コントロールズだ。1962年に創業、今年50周年を迎える同社は液体・気体の制御技術をベースに、流体コントロール製品である電磁弁の設計から事業を開始。さらに、さまざまな電磁弁・電動バルブの設計・製造へと事業を拡大してきた。

また、1985年には半導体装置用温度調節装置を開発、その技術をベースに精密空調装置や液体温度調節装置(チラー)を製品化した。現在、局所精密空調装置は世界市場で第2位、チラーは世界第3位の導入実績を持ち、半導体や液晶ディスプレイ、太陽電池などの製造装置に組み込まれ、利用されている。こうして、成長してきた伸和コントロールズは、神奈川県川崎市の本社、長野事業所、九州事業所、熊本事業所を拠点に、電磁弁・バルブ類を製造する機器事業と各種装置を製造する装置事業の2つで、事業を展開している。

2.事業所・担当ごとに異なるデータ管理の統一が課題に

従業員数280名の伸和コントロールズは、情報システム部門がなく、全社統一のシステム基盤の整備があまり進んでいなかった。各担当は、業務ごとに個別のパッケージソフトやMicrosoft Access・Microsoft Excelで開発した仕組みを使って、購買、生産管理、販売など個別にデータを管理していた。担当ごとに情報はきちんと収集されているものの、使っているデータベースやソフトが別々なので、入力も担当ごとに行うなど、作業や管理が二重、三重になっていることもあった。

「AccessやExcelに熟達した社員が名人芸のように、ソフトを使いこなして業務を行っていたため、その社員がいなかったり、忙しいとシステムが使えませんでした。また、データが担当ごとにバラバラに存在するため、毎月集計作業に工数がかかったり、せっかく作った集計データも間違いがあるような状態でした。加えて、長野と九州では別々のソフトを使っているため、購買の仕組みも異なり、九州では長野で使っている部品を見ることができないなど、拠点それぞれが別の会社のように活動している状況でした」と語るのは伸和コントロールズ 管理本部 課長 山口 正芳氏だ。

伸和コントロールズ株式会社 管理本部 課長 山口 正芳氏

そうした中、2009年秋頃から長野事業所の一部で利用していた生産管理システムについて、開発元のベンダからシステムのサポートを終了するという旨の連絡があった。そこで、伸和コントロールズでは思い切って、各事業所で統一して使える生産管理システムを導入することにした。
「長野事業所で使っていたシステムの例もあるので、評価が確立していて、長く使える信頼できる会社にしようと考えました。かねがね、京セラの『アメーバ経営』の考え方は素晴らしいと思っていたので、『京セラ』『生産管理』でインターネット検索した際、KCCSを発見し、セミナーがあったので参加しました」と振り返るのは伸和コントロールズ 管理本部 副本部長 山本 拓司氏だ。

伸和コントロールズ株式会社 管理本部 副本部長 山本 拓司氏

3.アメーバ経営の考え方に共感、KCCSの提案する「Infor LN」を採用

伸和コントロールズでは8社ほどのベンダにそれぞれデモを行ってもらい、比較検討した結果、最終的にKCCSが提案したインフォアジャパンのERPパッケージ「Infor LN」を採用することに決めた。「社長からは生産管理システムといわれていましたが、ERPパッケージであれば、生産管理だけでなく、経営面でもプラスになると考え、導入価値はあると役員に話して、納得してもらいました」(山本氏)。

機器事業部が製造する電磁弁は1つ1分ほどで作られるが、装置事業部の装置は部品点数も多く、1台作るのに1-2日ほどかかる。同社がInfor LNを選んだ大きな理由のひとつは両事業をひとつのシステムで統合的に管理できることだった。また、Infor LNは機能が充実しており、生産管理だけでなく、計画、会計、調達、販売など業務プロセス全体を網羅する形で機能が提供されている点も評価した。「インフォアジャパンのセミナーに参加すると、私たちが製品を納めているお客様が講演をされていました。10年以上Infor LNを使っているということだったので話を聞くと、『これから、少なくとも10年は使うつもりだ』ということでした。それを聞いて、今後10年も使うというのであれば、私たちも安心して使えると思いました。その上で、KCCSには京セラのシステム会社であるという信頼感があり、パートナーとして、赤字を出さずに利益を確保するというアメーバ経営の考え方を学ぶことができると考えました」(山本氏)。

4.計画どおりのコストと納期で、プロジェクトを完遂

ERPパッケージ導入においてはアドオン・カスタマイズをせずに導入することが成功のポイントとして挙げられる。しかし、実際にはそのとおりにいかないケースが多い。「カスタマイズすると、仕様のとりまとめに時間がかかりますし、その体制もないので、稼働が遅れ、費用もかさんでしまいます。会社としては一大決心の投資でしたので、余計な費用がかかるのはまずいと考え、必要に応じてパッケージに合わせて業務の見直しを行い、カスタマイズせずに導入しようと決めました」(山本氏)。そこで、プロジェクトオーナーは役員に就任してもらい、メンバーには各事業所から、購買、製造、技術の課長が入り、ベストの体制で、プロジェクトを組んだ。また、原価低減への取り組みは大きなテーマだと感じていたこともあり、原価管理が可能になるInfor LN導入には会社全体が積極的だった。本プロジェクトにおいて、KCCSはシステム導入だけでなく、パッケージに合わせて業務の見直しを行う際のコンサルティングも行った。

「コスト増と納期遅れにならないようにするには、具体的な手を打たなければなりません。そこで、山本副本部長と一緒にプロジェクト計画書を作り、プロジェクトオーナーである常務にはプロジェクトのスタート時や節目で、きちんと話をしてもらいました。また、プロジェクトメンバーは30人ほどととても多かったのですが、2011年4月のキックオフには全員が集まって、プロジェクトをスタートさせました。そこで認識が統一されたので、メンバーはプロジェクトの目標や自分の役割を非常によく理解していて、方針は最後までぶれませんでした。その結果、週次で実施していた打ち合わせでは、進捗遅れはほとんどなく、計画どおり、プロジェクトを完遂することができました」と話すのは導入プロジェクトを担当した京セラコミュニケーションシステム ERP事業部 事業部長 谷口 直樹だ。

京セラコミュニケーションシステム ERP事業部 事業部長 谷口 直樹

5.業務改善の継続推進と精度の高い経営管理で競争力を強化

2012年1月から稼働を開始した新システムでは、従来、担当営業がExcelで作り込んでいた1日の受注実績と出荷数量が受注と同時に、担当営業単位でも事業所単位でも、分かるようになった。「九州事業所の部品手配は、今までのパッケージソフトでは4人がかりで作業していましたが、Infor LNでは2人でできるようになり、大幅な工数削減を実現しました。その上で、現在、Infor LNから出てくるデータを活用して、原価管理の取り組みを始めているところです」(山口氏)。さらに、全社でプロジェクトを組んで導入作業を行い、同じシステムで業務が行えるようになったことで、事業所間で業務の進め方についての意見交換ができるようになった。これによって、別会社だったような状態が解消され、会社全体で一体となって業務改善を進めようという意識が生み出されてきている。「ものの動きと情報の流れが一致することで、データを共有して、さまざまな形で活用できる環境が整いました。これから、現場でさまざまな形で活用していくわけですが、それが身に付いてきたら、KCCSの連結経営管理ソリューション「GreenOffice Profit Management」による経営管理も検討していきたいと考えています」(山本氏)。伸和コントロールズでは今回の導入を踏まえて、今後、設計情報の一元化による工程の効率化や期間短縮を実現するPDM(Product Data Management)、災害対策や安定運用のためのデータセンターの活用なども視野に入れながら、競争力の一層の強化を図っていく考えだ。

取材時期:2012年2月
掲載日:2012年3月29日

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